2014年11月16日日曜日

大橋ジムが人気があるのは

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Sponavi+ 2014/11/16 08:15
黒髪のかねろの整理場所
なぜ河野公平はここまでも地味に見えてしまうのか
 井上尚弥、2階級制覇へ。スーパーフライ級で現状では最強とも言われるオマール・ナルバエスと12月30日に拳を交える。やや時期尚早な気がしないでもないが、プロ8戦目での2階級制覇という圧倒的な功績を持って怪物第2章とするのであろう。同日には八重樫東が3階級制覇を目指し、ホルヘ・リナレスも3階級制覇を目指す。盛り上がることは必至だろう。大橋ジムが人気があるのは、時折見せる無謀とも果敢とも言えるマッチメークと話題性にある。つまり、ストーリーがイメージしやすい。プロで描いてきた生き様がリングに反映されるのだとすれば、大橋ジムほど明快なジムはないだろう。
 そう考えると、翌日行われる世界戦はいささか地味だ。内山高志と河野公平。内山にはとてつもない強さがあり、技術もある。おそらく日本人の中では間違いなく1番と言えるであろう。だが、内山のプロとしての歩みは比較的順調だ。むしろ苦労していたのはアマチュア時代の方が多いくらい。そこには見えない「大人としての苦労」が滲んでいる。
 翻ってみて、河野公平はどうだろう。2年前の世界戦で一番期待されていなかったのは河野だった。テーパリット・ゴーキャットジムのかませ犬としての印象しかなく、ましてやWBCの世界戦でロハスに敗れて以降、再起戦となった日本タイトルで佐藤洋太に判定負け、再再起戦として望んだ戸部洋平戦でも判定負け。再々再起戦でようやく勝利したが、直後に入ってきた中でのテーパリット戦。誰もが彼の敗戦を想像し、引退までのビジョンを描いたはずだ。だが、河野は自らの拳でその逆境を変えてみせたのだ。2012年12月31日、試合は4Rに全てが起きた。三度のダウン、スタンレー・クリストドーローの稚拙なレフェリングを差し引いても十分な番狂わせ。河野公平は間違いなく、あのトリプル世界戦で一躍名を知られることになった選手となった。
 だが、彼の名はそれでも売れることはなかった。リボリオ・ソリスに敗れたとは言え、デンカオセーンに勝利して、再び世界王者に返り咲いたというのに。彼はプロの選手としては十分にそのストーリーを満たしている。佐藤洋太に敗れ、ロハスに敗れた選手として。十分な挫折とそれに見合う逆転的なストーリー。それでも彼は有名になることはない。なぜなのだろうか。
 エピソードなのかそれとも違う何かなのか。世界王者の中で最も地味な彼。ストーリーはある。34ながらあのパワーは驚異的だ。それでも、彼が注目されることは少ない。せいぜいあったとしても、亀田興毅との入札に関する話題くらいではないだろうか。井上尚弥のような見てくれが今時の印象ではないからなのか、それとも八重樫のようなキャラクターが立っていないからなのか。彼を見ても、どこか普通だ。穏やかそうで、真面目な日本人選手。自宅を練習場にして、父親に練習の相手をしてもらうこともしている。だが、よく考えてみて欲しい。そんな男がボクシング史上に残るような番狂わせを演じたのだ。それは彼が強大な運を持っていることに他ならない。ようやく決まった初の防衛戦は大晦日。当初の予定とはいささか異なる対戦相手となってしまったが。
 井上尚弥のようなスーパースターでも、八重樫のようなキャラクターがあるわけでもない。しかし、河野公平には地味なように見えて、もしかしたら誰よりも運が強くそして何よりも重厚なストーリーを持っている。その運を手繰り寄せたのは彼自身の努力であるし、諦めなかった気持ちの強さでもある。アマでの実績もほとんどないままプロへ飛び込んだ彼が、世界王者になるまでにはどれほどの苦労があったことだろう。そんな苦労が滲み出た初防衛戦。それは河野公平という男の「生き様発表会」でもある。


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