2016年2月10日水曜日

ボクシングのプロとは

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Livedoor'NEWS  2015年12月30日 7時0分
ボクシング新名言:「強い選手と戦うということがプロボクサーにとって喜びであり、仕事であり、最高の恩返し」(八重樫東)
スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム
ボクシングのプロとはこういうことだ!
手に汗握った。その汗が飛び散るほど拍手した。感動した。2015年の年末はお茶の間に格闘技が復活するという大きな楽しみ・盛り上がりのある年ですが、大晦日の試合を待つまでもない。ベストバウトはこの試合で決定です。八重樫東の3階級制覇、これぞプロフェッショナルだと膝を打つ想いで、僕からも手作りのベルトを贈りたい。
試合後のインタビュー、そこにはすべてのスポーツエンターテナー、とりわけ格闘技に携わる「プロ」たちに、壁に書いて毎朝読めと言いたくなるような至言がありました。三階級制覇を祝うインタビュアーに対して、三階級制覇はオマケなんだということを説明するくだりでの言葉。
「強い選手と戦うということがプロボクサーにとって喜びであり、仕事であり、お金を払って見にきていただけるみなさんにとっての最高の恩返しだと思うので、三階級(制覇)というのは結果としてついてくるものなのでオマケとさせていただきます」
スポーツエンタメが売っているものは勝ち負けではなくて面白さ、より厳密に言えば「面白そう」という夢です。夢がある、ワクワクする。何かが起きるような気がする。その期待感を高めるために努力があり、夢の可能性を生むためにチャレンジがある。チケットを買うときに「勝ち試合です」とは書いていません。あくまでも買ったのは夢なんです。
ハッピーエンドの映画もあれば、絶望的な幕引きの映画もあるように、結果は約束できるものではない。だからと言って、夢を売ることを止めたら、それはもうプロではない。地上最強の男なんて言っても、僕が戦車に乗って体当たりしたら死ぬんです。小さな拳銃で撃っただけでも死ぬんです。強さとか、勝利とか、最強とかは、それ自体に意味があるものではなく、夢を膨らませるための材料に過ぎません。
今のボクシング界は他団体かつ王者が乱立する王者濫造の時代。もはやベルト自体にはさしたる意味はありません。ベルトは夢へのチケットです。それを持っていることで、夢に挑戦できるというチケットです。八重樫東はそのチケットを正しく使った稀有なる男。俺が王者だ、俺のベルトを獲ってみろ、立ちはだかる形で軽量級最強の一角であるローマン・ゴンサレスを迎え撃った。まさに夢の試合。逃げてもいいし、実際に逃げた輩も多いだろう最強の挑戦者と戦い、壮絶に散った。あの夢だけでも、一生分尊敬できるだけの価値がある。そういうボクサーです。
正しくチケットを使う選手のところに、チケットが戻ってきた。次にどんな夢を見せてくれるのか、期待せずにはいられない。そして、それが「仕事」なんだということをほかの同業者にも改めて感じてほしい。自分より強いかもしれない相手と戦わずに、何がチャンピオンかと。「コイツのほうが強いかもしれない」相手を全員叩きのめした男だけがチャンピオンなんだということを、改めてすべての「プロ」に自覚してもらいたいもの。
ヤマダ電機が「他店のほうが安かったらチラシを持ってきてください。ウチもその値段にします」と言い張るように、「俺より強いヤツがいるんなら試合をやろう。叩きのめしてやる」となってこそ「プロ」。強そうじゃない相手との試合はすべてノーカン、すべて前哨戦。それぐらいの気持ちで仕事に取り組んでもらいたい。八重樫東の言葉を噛み締めながら…!
ということで、日曜日の密着ドキュメンタリーの模様を絡めつつ、29日のフジテレビ中継による「IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ ハビエル・メンドーサVS八重樫東戦」をチェックしていきましょう。
◆オマケとは言え三階級制覇するとは大したもんやで!しゃーこらー!
この試合に先立ち、フジテレビは八重樫東密着ドキュメントを放映していました。特に何かが起きるわけでもない、八重樫東の日々の暮らしに寄り添ったものです。一男二女の父親として、夫として、淡々と暮らし、黙々と練習に打ち込む、そんな男の日常です。
主にクローズアップされたのは長男との関係。実は長男は奥さんの連れ子でふたりに血のつながりはありません。しかし、息子は父を「神のようにカッコイイ」存在として尊敬し、父は息子を「この子が僕を父親にしてくれた。あの子でなければ父親にはなれなかったし、世界チャンピオンにもなっていなかった」と感謝を持って慈しむ。哀しいニュースが多い世の中で、心温まるような関係でした。
八重樫さんが朝起きて、まずすることはロードワーク…ではなくて朝食の支度。次にすることはロードワーク…ではなくて子どもたちの学校への送り届け。ようやく始まるのはロードワーク…ではなくて部屋の掃除。ガタイも含めて、ただのビッグダディです。ちなみに、奥さんはそのときオヤツを小さな袋に小分けにする作業をしていました。うん、オヤツ小分け作業も大事ですからね。大事大事。
ボクサーと言えども家族の一員。サラリーマンが家の掃除や洗濯をやるように、プロボクサーも食事の支度をするのです。やっと練習に行った八重樫さんが、帰ってきたあとに早速夕食の支度を始めたときには、さすがに「キミよく働くね!」とビックリしましたが。引退後かと思うような働きぶりを見て、「いつでも引退できるな」「いいフリーターになれそう」「今からでもビル警備のバイトしないか?」と僕も感心します。
32歳という年齢を考えれば、引退は遠くない未来にある話。もうすでに辞めていてもオカシクない状況でもありました。昨年ベルトを失ったあとは、家族にも辞めたほうがいいかを投票してもらって決めたとも言います。子どもたちはものすごく軽く、アッサリと、つづけることに賛成したそうです。やはりお父ちゃんはヒーローなのです。神様なのです。「試合は怖いけど、殴られても大丈夫そうだし、すぐに治るし」と思えてしまう、最強のオトコなのです。
長男はこの試合にあたり「カッコいい試合をしてほしい。カッコよく負けるのとカッコ悪く勝つのだったら、うーん……」ともらしました。その言葉を伝え聞いた八重樫さんは「カッコよく勝ちたいですけどね…。一生懸命戦って勝つのであれば、それが不格好でも彼の目にはカッコよく映るんじゃないかな」と勝利への闘志を燃やしていました。長男が思うほどに自分は無敵ではないけれど、勝ってヒーローでありつづけたいという父の決意。八重樫さんの日常は、そうしてこの試合へとつながっていきました。
もうすでに、そのドキュメントの時点で僕の胸はカーッと燃えているわけです。ボクサーの勝った負けたじゃなくヒューマンドキュメンタリーとして盛り上がっているわけです。「不格好でもカッコよく映る勝利」、それを僕も見たい。いつもそれを見たい。「せやな」とガッチリ握手したいような気分。
↓カッコいいって何だろうな!めちゃくちゃ殴られてもカッコいい試合ってのはあるもんな!八重樫VSロマゴン戦のように!
夢のない勝利よりは、夢のある敗北のほうが面白い!
頑張れ八重樫!できれば勝て!勝てばなおよい!

そして始まった中継。いきなりももいろクローバーZが現れ、自身の代表曲を唄い出したときには「やっべぇ」と僕も思わず唸ります。この緊迫の中でもまったくひるまないももクロちゃんと、「ハァ」みたいな顔でスルーする村田諒太さん。ものすごくヘンな空気だけど、八重樫やれんのか。僕はももクロちゃん好きなんで平気ですけど、八重樫のことが若干心配です。
まさかももクロちゃんのせいで調子が狂ったわけではないでしょうが、立ち上がりの八重樫にはいきなり激闘の予感が漂います。手が長いサウスポーといういかにも面倒な感じの相手に対して、積極的にボディ打ちなどを仕掛けるものの、相手の右のリードが簡単に顔面に刺さってしまう。「今日も顔はパンパンだろうな」と初回から確信するような打たれぶり。2回には早くも薄っすらと血が滲みます。
しかし、動き自体は悪くない、むしろイイ。スピードと回転で上回り、ときおり効いたパンチも放つ八重樫。ラウンドの終わり際だったりして決定的な追撃には至りませんが、ポイントは取れている感触。中盤にギアを上げて前後の出入りを多くすると、チャンピオンは八重樫の動きについてこられません。ラウンドを重ねても八重樫の優位は変わらず、判定なら大差となりそう。
ただ、打たれる回数も相変わらず多い。まぶたは腫れあがり、鼻・唇からも流血しており、とても勝っているほうの選手には見えない顔面。第7ラウンドには一発もらったところから一瞬ロープに詰められるなどヒヤッとする場面も。「倒すしかない」と悟り始めたあとのチャンピオンの強打には、常に不安がつきまといます。うっかりもらって倒れやしないかという不安が。そういう意味では、実際の危なさ以上の危なさを演出する「ガラスの顔面」がイイ味を出している。余裕で勝っている試合なのに、全然余裕が感じられない!
↓殴ってるほうだけがボコボコという引っ掛け問題みたいな顔面!
普通のボクサーの10発ぶんくらいの顔面破壊を1発で起こすタイプwwww
そりゃ息子も「すぐ治るから大丈夫」とか余裕かますわけだwwww

そして試合は終盤戦へ。倒されなければ大丈夫という状況でも、倒されそうな殴り合いを続行する八重樫。11ラウンドには激しい殴り合いからの煽りガッツポーズで会場をドッと盛り上げ、アキラコールが始まると、八重樫の子どももつられてアキラコールを開始。いい試合、燃える試合です。
そして最終12ラウンド。残り1分で放った右が大きくチャンピオンをグラつかせると、連打・連打・連打。もはや抱きついているしかできないようなチャンピオンの姿には、レフェリーが止めてもいいんじゃないかと思ったほど。試合終了と同時に八重樫陣営は肩車でリングを回り始める実質的なKO勝利。顔はボッコボコですが内容は圧勝。まさに「不格好だけどカッコよく映る勝利」をやってのけた!
↓不格好なほうが勝ったほうだ!激闘王っていうか、皮膚弱王だ!
悲願じゃないけど3階級制覇!
弱い相手を探して暫定王者とか王座決定戦を駆使したものではない、正規王者での3階級!お見事!
メンドサも清々しい王者だったな!
↓相手陣営のエリック・モラレス(元4階級王者)も試合中からガンガンツイッターをして、最後には八重樫を讃えていたぞ!
って、試合中にツイッターしてんじゃねぇwwwww
だから負けたんじゃないのかwwwww

負ければ引退して実家のある岩手に帰ろうかという状況でもありましたが、勝利によって長男は転校を回避でき、家族にはまた少し稼ぎのメドが立ちました。しばらくボクシングで出掛けていたお父ちゃんが帰ってくることで、掃除や炊事もラクになります。八重樫家にとって最高の勝利。しかも、「去年贈れなかったけど、このベルトは妻の誕生日プレゼント」とリング上でベルトをプレゼントするのですから、ハートウォーミング極まりない。
しかし、このハートウォーミングはまだ不完全なもの。奥さんにはベルトをあげましたが、八重樫家には子どもが3人いる。自分のぶんはいらないとしても、4本必要ではないのか。どうせなら全員分ほしい。今回IBFのライトフライ級を制したことで、八重樫はWBAミニマム、WBCフライと合わせて「3団体王者」でもあります。ここにWBOのベルトを加えたら、すごく美しいんじゃなかろうか。
せっかく手に入れたベルトなら、より強いヤツと戦うために使ってほしい。それがIBF・WBO統一戦なら、すごく面白そうで夢がある。家族会議では「夢とかどうでもいいから弱いヤツと戦って」「まずファイトマネーを稼いでからです」「強いヤツに1回勝つより、ザコ相手に10回防衛するほうが私は好き」なんて意見も出るかもしれませんが、いい妥協点を見つけてほしいものですね。
「強い選手と戦うということがプロボクサーにとって喜びであり、仕事であり、恩返し」なのですから!
「弱いヤツと戦ったほうが儲かる」というシステムがオカシイんですけどね!




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