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THE PAGE 2014.12.08 21:00
異色のリーゼント王者が事実上の引退危機
東洋太平洋スーパーバンタム級王者の和気慎吾(27歳、古口ジム)が、引退の危機に面していることが8日までに明らかになった。一度は、内定していた大晦日のWBA、WBO統一王者、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)への世界初挑戦を和気が拒否して“逃亡”。その不可解な回避への経緯を巡ってジム側が、和気に不信感を抱き、今後のマッチメイクも厳しい状況に追い詰められた。このまま事実上の引退状態となる可能性も出てきた。
リーゼントボクサーのキャラでファンの間で密かな人気が出始めていた東洋王者の和気は、12月30日に東京体育館で行われるトリプル世界戦のアンダーカードで、ジミー・パイパ(フィリピン)と防衛戦を行うことが内定しており、所属先の古口ジムの古口哲会長は、プロモーターと契約書も取り交わしていた。だが、その後、TBS側から統一世界王者のリゴンドーへの世界挑戦話が舞い込んだため、古口会長は、そのリゴンドー戦へ方向転換。東洋太平洋戦のプロモーターに「東洋戦は破棄したい」と連絡をした上で、和気本人とも話し合いを持って11月8日にTBS側と和気本人を交えて交渉の席を持ち、リゴンドー戦を了承する旨を伝えた。
五輪2連覇後に米国へ亡命してプロ転向。14戦無敗で中軽量級世界最強とも言われる超大物ボクサーへの挑戦について、古口会長も「厳しい試合になることは確かだが、上がり調子の和気なら何が起きるかわからない。大晦日という大きな舞台で、あのリゴンドーと戦えることは財産になるし、たとえ負けたとしても次につながる」と考え、和気本人も、TBSの責任者を前に「やります」と断言した。
だが、この動きに東洋太平洋戦をプロモートしていた関係者が意義を唱え、翌9日には古口会長の頭越しに、和気を呼び出し同伴させた上で、TBS側に「東洋戦を先に契約しているので、今回のリゴンドー戦は無効であり、やらない」と伝えた。そのボクシング関係者は、「和気は、フジテレビがここまで育てた選手。それを試合契約した後にTBSに鞍替えするのは、業界のルールに反するし、リゴンドーとやっても勝てないし意味がない。来年はフジテレビが世界戦を組むと言っている。JBCも、すでに認定した試合契約を破棄したらとんでもないことになる」と言って、和気を説得したようだが、和気のマネジメント権を持つ古口会長を通さずに、このような話を独断で進めたため、事態は最悪の展開となった。
和気がリゴンドー戦を断った話をTBS側の責任者から聞かされた古口会長は驚き、その事実関係の確認のため和気に電話連絡をとったが、「やりません」と答えただけで詳しい説明もなく、以降、ジムにも一切顔を出さずに音信不通となった。大晦日の目玉カードにリゴンドー戦を組んでいたTBS側は、最終的な返答リミットを11月18日に定めていたが、その日を過ぎても和気との連絡がつかなかったためリゴンドーvs和気戦は消滅。リゴンドー戦のプロモーターである協栄ジムの金平柱一郎会長が動いて東洋太平洋フェザー級王者である天笠尚(山下)に急遽、挑戦者を変更した。
11月26日になって、ようやく和気が古口ジムに現れて、一連の行動について謝罪したが、古口会長は、ジムの責任者である自身に何の相談や確認もないまま、独断でTBS側に「リゴンドー戦はできない」と伝えた事実と、その後連絡を一切絶って、無断でジムでの練習を欠席し続けた無責任な行動を問題視。12月2日には、和気本人を呼びだして、今後について改めて会談を持ったが、古口会長は、今回の無責任な行動がジム関係者やスポンサーに多大な迷惑と、損害を与えたことを伝えた上で、今後、関係各位への謝罪など和気とジムとの信頼関係が回復しない限り、東洋王座も返上、事実上の引退扱いとなる可能性を通告した。「今のままでは試合を組めない。今後どうするかは自分で考えなさい!」と突き放した。
和気自身は、リゴンドー戦を断った理由について、「ここまでフジテレビにお世話になってきたし、来年には世界戦をさせてくれるという話も聞いた。まずは世界チャンピオンになってからリゴンドーとは統一戦として戦えばいいと考えていた」と説明。一切連絡を絶って、ジムで練習を行わなかった無責任な行動に対しては「判断を間違っていた」と謝罪した。すでに12月30日の東洋王座の防衛戦はキャンセルとなったが、それを知らなかった和気は、「え? それもなくなったんですか」とショックを隠せない様子も見せた。
和気も、ある意味、フジvsTBSのボクシング興業戦争の間に挟まれた被害者とも言える。古口ジムサイドも、一度は契約した東洋王座戦の破棄を、そのプロモーターに正式に認めさせてからリゴンドー戦へ舵を切るべきだった。しかし、17歳で岡山から古口会長にスカウトされて以来、数年にわたって住居費を含め公私にわたって面倒を見てもらい、新人王戦で2度敗れながら、東洋王者、世界ランカーになるまでサポートを受けてきた古口会長へ、何の相談もせぬまま単独行動をしたのは、27歳の分別のあるプロボクサーの行動として問題があることは間違いない。世界初挑戦で、最強王者リゴンドーへ挑むことは、無謀との賛否はあるかもしれないが、それは、ジム内で解決すべきことで外部の人間と決めることではないだろう。ローマン・ゴンザレスのチャレンジを受けた前WBC世界スーパーフライ級王者、八重樫東(大橋)のように逃げない姿勢を示すことは、プロボクサーとして本来、あるべき姿でもある。古口会長も、「和気は最高のチャンスを逃した。私には、その彼の考えが理解できない」と語っていたが、やりたくとも“試合ができない”という事実上の引退危機を迎えた和気が、今後、どのような選択をするのか。年末に盛り上がる世界戦ラッシュの裏で一人の人気ボクサーが大きな岐路を迎えている。
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