2014年11月25日火曜日

世界の高き壁

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アントニオ・ホドリゴ・ヌゲイラの格闘日記 2014-09-12 23:55
ロマゴン強し。日本ボクシング、またも世界の壁に屈する。
 録画予約を忘れるという大失態を犯してしまったWBC世界フライ級タイトルマッチ、八重樫東vsローマン・ゴンザレスの映像をようやく見たので感想を。
 1R、距離を取って様子見の八重樫だが、ラウンド後半に鋭い左ジャブを2発、3発と入れていく。終盤にロープ際に詰められロマゴンのボディをもらう場面はあったが、動きは悪くない感じ。
 2Rに入った途端、ロマゴンが一気にギアを上げて攻勢を仕掛けてくる。角度のバリエーションをつけながら連打を入れるロマゴン得意のパターンだが、八重樫はここで下がらず打ち合いに応戦してみせる。すると3Rは序盤から八重樫が先手を取り続け、打ち合いでロマゴンを押していくまさかの展開。しかしラウンド終盤に距離の詰まったところでロマゴンの左フックが入り、八重樫痛恨のダウン。 しかし八重樫はこの後もひるむことなくロマゴンとの打ち合いに応じ、手数の上では決してひけをとらない好勝負を演じてみせる。決して自棄になっての打ち合いではなく、コンパクトに上下を打ち分けているのが実に上手い。だがこの展開になると回転力とキレを併せ持つロマゴンに分があるか。 案の定というべきか、6Rに入った途端に八重樫の手数がガクッと減り、下がる場面が目立ち始める。依然としてノンストップで上下左右の連打を繰り出しいつもの勝ちパターンにはめていくロマゴンに対し、八重樫は根性は見せるが一発狙いの展開に追い込まれてしまう。
 8R、ロマゴンは試合を決めに来たか、序盤から距離を詰めての猛攻。ダメージの蓄積でフラフラの八重樫だが、ダウンすることなく立ち続け、ロマゴンの攻撃が止んだ瞬間には反撃する粘りも見せる。 しかし続く9R、ロマゴンは攻撃の手を緩めることなく、なおも猛攻。決して大振りではないコンパクトなパンチを入れ続け、最後は顔面に左右の連打を叩き込んだところで八重樫が力尽きるようにダウン。世界屈指の強豪を相手に迎えての大一番は、KO負けによる王座陥落という結果に終わった。
 感想としてはまず何よりも「ロマゴン強い」の一言。八重樫がフットワークでロマゴンの距離を外し続ければ・・・という展開を期待していたが、そんな試合運びを許してくれる余地すらなかった。打ち合いの展開になっても際のディフェンス勘の良さは相変わらずで、両目が腫れ上がっていく八重樫に対しきれいな顔のままのロマゴン、という対比にこの選手のハイレベルなバランスの良さが集約されていたと思う。
 続いて八重樫について。「善戦」という言葉を使って褒めるのは負ける前提だったと認めることになるので決して言いたくないし、今回の敗戦は「西岡vsドネアに続き、日本ボクシングが世界の高き壁の前に屈した」という文脈で捉えるべきだと思う。最初にそう断ったうえで、ただ一言。感動した。
 結果としては完敗だし、序盤から打ち合いの展開を強いられたのはやはりロマゴンのペースに呑み込まれた、という見方にならざるを得ない。それでも3Rにはその打ち合いの展開から「あわや」という場面を作ってみせたし、乱打戦の中でも丁寧なボクシングを忘れなかった辺りは八重樫の真骨頂だろう。試合結果を知ったうえで映像を見ていたが、8Rにボロボロになりながらも立ち続ける八重樫の姿には涙を押さえることができなかった。結果を知らずにこの試合を見ていたら、絶対号泣していたと思う。
 繰り返しになるが、今回の敗戦を善戦と捉えてしまうのは八重樫に対しても失礼で、日本ボクシングにとって痛い一敗であることは変わらない。それでも、防衛回数を重ねる安易なマッチメイクを避け、同じ階級で一番強い相手と戦うというシンプルかつ困難な選択をしたこと自体が賞賛に値するのも間違いない。どれだけ高く険しくても、まずは壁にぶつかり続けるしかない。それを超えた先に、新しい地平が開けてくるはずだ。

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