2014年9月10日水曜日

勝者だけが喝采を浴びるのが常だが、それでも八重樫は称賛された

http://www.sanspo.com/sports/news/20140910/box14091011300001-n1.html
サンスポ 2014.9.10 11:30
「強い人に勝ちたい」壮絶に散った八重樫の男気に拍手
 メモを取る手が止まり、リング上の激闘に目がくぎ付けとなった。5日に行われたプロボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチ。「生きる伝説」と称され、多彩なパンチでプレッシャーをかけるローマン・ゴンサレスに対し、王者の八重樫東は足を止めて真っ向から打ち合った。久しぶりに見る「これぞボクシング」という好カードだった。
 結果は9回TKOで八重樫が敗れたものの、会場にいた観客は誰もが知っていた。この試合にどれだけの価値があるかを。だから試合後のリングで、新王者と並んでインタビューを受けた敗者に勝者以上の温かい拍手が送られたのだ。
 現在のボクシング界は変質している。昨年4月、日本ボクシングコミッション(JBC)はWBAとWBCに加え、IBF、WBOを新たに認定し、認定団体は4つになった。世界挑戦の機会が倍増したことで、4人のうち最も可能性ある王者を選んでベルトを奪取すれば、その後はより安全な相手を選んで防衛を重ねる傾向が強くなった。このような手法を規制するルールはなく、スポーツとはいえ、ビジネスとしての側面もあるので、全面的に否定はできないが…。
 そんな風潮に八重樫はあらがってきた。2012年6月には井岡一翔とのミニマム級王座統一戦に挑み、激しい打ち合いを演じた末に僅差の判定負け。1度も防衛しないままベルトを失った。スポーツの世界は勝者だけが喝采を浴びるのが常だが、それでも八重樫は称賛された。「強い人に勝ちたい」という信念を貫き、潔く散ったからだろう。
 世紀の一戦をリング下で見届けた同門の井上尚弥は「いつかは八重樫さんの借りを返したい。フライ級でしっかりやってから、敵を討つ」と宣言した。王座陥落を恐れず、真の強さを追い求める八重樫東という特異なボクサーの存在が、ボクシング界に新しい流れを作り出したようだ。

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