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東スポweb 2021年01月30日 10時00分
【ボクシング】元世界3階級制覇王者・八重樫東氏 引退後は指導者&運送会社社長の〝二闘流〟
【The インタビュー~本音を激白~(6)】昨年9月に現役を引退したボクシング元世界3階級制覇王者の八重樫東氏(37)は現在、所属した大橋ジムのトレーナーとして元K―1王者の武居由樹(24)と、アマ8冠の中垣龍汰朗(21)を指導するとともに「運送会社社長」として奮闘中だ。連載「The インタビュー」今回は、激しいファイトスタイルでファンを魅了した「激闘王」がについて語った。
――改めて現役生活お疲れさまでした。現在の肩書は「大橋ジムのトレーナー」でいいか
八重樫氏(以下八重樫)確かにそうですけど「軽貨物配送会社社長」でもあるんです。
――実業家として飲食業に進出したのは有名だが、なぜ運送会社か
八重樫 ボクサーの仕事というと、飲食業が多いですけど、試合前に「1か月休みたい」と言うと(店側に)嫌がられる。仕事をしないとお金はもらえないし、一生懸命働くと練習時間が減る。「どっちを取る?」となってボクシングをやめる子を見てきました。
――そうした悩みはよく耳にする
八重樫 知り合いから「アスリートの支援ができないか」との申し出があって軽貨物運送のドライバーをボクサーにやらせることにしたんです。アスリートはフレックスの勤務形態で自分でスケジュール管理し、練習の時間をつくらせます。時間のコントロールができれば引退後にどこに行っても“時間軸”をうまく使えますから。
――引退後も立派な社会人になれる
八重樫 ボクサーは“潰し”が利かないと言われるのが嫌。本当は、何かに打ち込んできた人は何でもできるはず。
――だが、他競技でも現役引退後、うまくいかないケースは多い
八重樫 選手を終わってポン、と社会に放り出されるから右も左もわからず「いい年して何もできない」とか言われてしまう。僕たちは勝ち上がっていけば、それなりの対価を与えられたので頑張った。運送業もやったらやった分だけもらえる。環境はつくるから頑張ろうというのが(ボクサーに)ピッタリと思って始めたんです。
――多くの人とも交流できる
八重樫 それが大事。他の業界の人と話すと、ボクシング界とギャップがあることがわかる。それをわかってないと、社会に出たときにすごくバカにされることになりますから。
――現在、八重樫社長のもとには何人いるか
八重樫 大橋ジム以外の選手も含めて8人です。ボクシング界を変えたい? そこまで大層なものではなく、ジムと大橋(秀行)会長(55)への恩返しの気持ち。夢を持って頑張っている人間がそれに向かっていけない現状を少しでも何とかしたい思いですね。
――トレーナーとしては元K―1王者の武居とアマチュアで国内外8冠の中垣を指導。3月11日にデビュー戦(後楽園)を控える武居はどんな選手か
八重樫 ボクシングファンって最初は“よそ者”扱いするかもしれませんけど、性格もいいし、実力もあるので愛される選手になると思います。
――本人は世界王者を目指すと言っている
八重樫 僕は辛口に評価するんです。バンタム級戦線なのでそんなに甘くないですし、試合をしてないから、試していないものが多過ぎます。今の時点で言うとまず(目指すの)は日本王者かな、という感じです。
――世界にたどり着くには自身の3階級制覇の経験が役立つ
八重樫 世界王者になるには何が必要か、ある程度自分にはわかっています。だからこそ甘くないのもわかっています。
――元K―1王者への期待は大きい
八重樫 ものすごく期待感があるのは愛されているからこそ。重圧を背負って苦しむかもしれないけど、そこはカバーしていくつもりです。
――師弟で世界を狙うのは中垣も同じだ
八重樫 ボクシング経験が長いので自分で考える力がある、頭のいい子です。練習でも「八重樫さん、こうした方がいいです」と言ってくることがある。話し合いながら練習をつくっていくのをさらに精査し、いいものをつくっていきたい。
――日本ボクシング界は、WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(27=大橋)、WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(35=帝拳)、かつては拳を交えた4階級制覇王者の井岡一翔(31=Ambition)らが輝いている。現状をどう見るか
八重樫 世界に通用する選手が出てきたのは、いいなと思います。バスケのマイケル・ジョーダンやテニスの錦織(圭)君みたいに、スポーツを始めるきっかけって誰かへの憧れが多いと思うんです。そういう象徴に尚弥たちがいるのは、すごくいいことですよね。
――憧れの存在がいれば裾野の拡大になる
八重樫 なので尚弥たちにはまだまだ輝いてほしい。その傍らで自分が何かできるのは、幸せなことですよ。
現役時代と同じように語り口は穏やかだが、行動の内容は熱い。ボクシング界のために様々なことに「激闘」する八重樫氏の今後に注目だ。
☆やえがし・あきら 1983年2月25日生まれ。岩手県出身。アマチュアでは高校総体、国体を制覇するなど通算成績は70戦56勝14敗。拓殖大を卒業後に大橋ジム入りし、2005年3月にプロデビューした。ミニマム級で日本&東洋太平洋王座を獲得。世界タイトルは11年10月にWBAミニマム級、13年4月にWBCフライ級、15年12月にIBFライトフライ級で3階級制覇を果たした。プロ通算成績は35戦28勝(16KO)7敗。20年9月に現役を引退した。161センチ。
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