https://goo.gl/auM3W5
THE PAGE 2018.03.27 06:00
激闘王・八重樫2回TKOで10か月ぶり再起飾るも「情けない」。照準階級変更も
帰ってきた激闘王・八重樫。だが、内容にはまだ?がつく
プロボクシングの元世界3階級王者の八重樫東(35、大橋)が26日、後楽園ホールで行われたスーパーフライ級10回戦でインドネシア・フライ級王者のフランス・ダムール・パルー(34 、インドネシア)を2回2分24秒TKOで倒して10か月ぶりの再起戦を飾った。だが、八重樫本来の動きは見られず本人は反省の弁。大橋秀行会長も、4階級制覇を狙うはずだったスーパーフライ級からフライ級に八重樫の今後のターゲットを変更する可能性があることも示唆した。35歳。一度は引退も考えた“激闘王”の崖っぷちは続く。メインではロンドン五輪銅メダリストのOPBF東洋太平洋フェザー級王者の清水聡(32、大橋)が同級11位のグォン・ギョンミン(25、韓国)を8回1分6秒TKOで下しV2に成功した。清水には年内世界挑戦へGOサインが出された。
これが深層心理に染み込んだトラウマなのだろう。八重樫の体が動かない。インドネシアのローカル王者レベルのいらないパンチを被弾した。「心配になった」という大橋会長が、「足を使え!足!」と指示。フットワークを使うが下がるからリズムもバランスも取り戻せない。ボディに小刻みなパンチを集めるも、どこか恐々だった。
「1ラウンドでKO負けした次の試合というのは最初が怖いんだ」
大橋会長には、八重樫が動けなかった理由が手にとるようにわかった。
2017年5月21日、有明コロシアムで暫定王者のミラン・メリンドとIBF世界ライトフライ級王座統一戦を戦い、1回、衝撃のTKO負けでキャンバスに散った。植え付けられた恐怖が八重樫を凍りつかせたのか。
「八重樫はもう終わったんだ、というような声を見返したかった」
焦りがあった。
本当は練習してきた出入りのボクシングを試したかったが、得意の殴り合いを仕掛けた。
インファイトならいつでもできる自負はある。距離を詰め接近戦を挑んだ八重樫が、ボディやアッパーをコツコツと当てながらダメージを与え右をブンとふると、パルーはリングに手をついた。一度目のダウン。スリップをアピールして立ち上がってきたが、今度は左フックで正真正銘のダウン。エプロンから落ちそうになるくらいの威力だった。再びパルーはKO負けを拒否したが、左のボディブローが炸裂すると3度目のダウンにレフェリーが試合を止めた。
後楽園ホールが「アキラコール」で沸く。激闘王の戦いには変わらずファンを引きつける魅力があった。いつものように顔が腫れていないから表情がよくわかる。しかし、心も晴れていなかった。
リング上でアナウンサーから「お帰りなさい!」と振られると、「半分くらい帰ってきました」と、冗談半分、本気半分で返した。
「ダメでしょう。やってきたことが何もできなかった。自分にガッカリというか……情けない。なんでだろう。僕は自分を過大評価するほうじゃないんですが、もっとできる、もっと動けると自分に期待していたんですけどね。緊張もしていたんでしょうか。バランスを崩し力むというパターン。手ごたえ?スカスカです」
ホールの下の階にある控え室で八重樫は「はあ」「うーん」と何度もタメ息のような声を漏らした。
求めているのは20勝(12KO)18敗2分の戦績のインドネシア人を相手にしての勝利ではない。「自分勝手に動いて納得のいくボクシング」である。再び世界へ行くためにやるべきこと、やりたいことが、何ひとつできなかった。
2階級を上げて減量苦からは解放された。だが、そのプラス面が動きに反映されず、ライトフライ級では群を抜いていたパワーも、スーパーフライ級では、まだ中途半端。
「まだスーパーフライではない。もっと高めていかなければスーパーフライと言っちゃいけない」
八重樫も自虐的だ。
世界再挑戦の5文字も「何も見えない」という。
大橋会長も、「ちょっと(スーパーフライ級にしては体格が)小さいかもな。本人とも相談してみるけど、フライ級の方がいいのかもしれない」と、2階級上げての日本人初の4階級制覇計画を1階級上げてのフライ級での返り咲き計画に軌道修正する考えがあることを示唆した。
フライ級には連続KOの日本記録に並んだWBC王者の比嘉大吾(白井・具志堅)、同じく好ファイターのWBO王者の木村翔(青木)と、日本人王者に強打者が揃っていて、八重樫とのマッチメイクが実現すれば注目のカードになることは間違いない。八重樫が「記録より記憶のボクサー」であることを考えれば4階級制覇にこだわる必要もないのかもしれない。フライ級での挑戦になるにしても、次戦は本人が納得し、周囲の不安を解消するような試合を見せなければならないだろう。1ラウンドの動きの悪さは、ブランクを経ての恐怖心だったのか、それとも反射神経の衰えだったのか。八重樫が非常に客観的に自己評価のできているところが救いだが、次戦で、その点をハッキリとさせておく必要がある。
ただ復活のリングに立つまでのプロセスに“光”は見えた。
「試合が決まってからの1、2か月は充実していた。楽しかった。こういう日々が好きなんだ、と改めて確認できた。そこは収穫。リングに上がれるって幸せなこと。この気持ちを力に変えれるようにしたいし、35歳だけど、まだまだ伸びしろがあると思っている。次にはつながった。ここはゴールじゃない」
ベテランと言われるボクサーにとって重要な「戦う理由」は、ますます熱い。
世界から陥落したとき、頭をよぎった引退という言葉も、今は傍らにない。
大橋会長も「1試合したことで吹っ切れただろう」という。
試合後、3度倒されたパルーは「八重樫は強かった。フットワークをうまく使われた。彼が再び世界王者になれるかって? もちろん、そういう実力を持ったボクサーに感じた」と八重樫の復活ロードを支持した。
激闘王は生き残った。次こそが世界再挑戦の資格を試される真のテストマッチとなる。
0 件のコメント:
コメントを投稿