2017年3月30日木曜日

流血と判定

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スポニチ 2017年3月30日 09:30
ロマゴン初黒星 ドクターチェックが不利招いた可能性…軽量級の今後に影響
18年前のニューヨークを思い出した。1999年3月13日、マジソンスクエアガーデン(MSG)。ボクシングの世界ヘビー級王座統一戦、イベンダー・ホリフィールド(米国)―レノックス・ルイス(英国)は三者三様の判定で引き分けに終わった。当時、リングからかなり離れた席にいた記者は後半に前へ出続けたホリフィールドの優勢と思ったが、実際にはルイスが手数、パンチの精度ともに上回っており、リングサイドは判定が出た直後から「不可解な採点」と騒いでいた。
 3月18日、同じMSGで行われたWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチで「ロマゴン」こと4階級制覇のローマン・ゴンサレス(ニカラグア、帝拳)がプロ47戦目にしてまさかの初黒星を喫した。ランク1位のシーサケット・ソールンビサイ(タイ)に0―2の判定負け。ジャッジの採点は1人が113―113で、残り2人が114―112でシーサケットを支持したが、ほとんどの米メディアが「ロマゴンの勝利」と判定に疑問を示している。ちなみに、本紙評論家の浜田剛史氏(元WBC世界スーパーライト級王者)は114―112でロマゴンの勝利としていた。
 浜田氏の採点をロマゴン側から見ていくと、1回はバッティング気味の不運なダウンを喫して8―10。2回も9―10で取られたが、3〜5回は優勢でいずれも10―9。6回は攻勢に加えてバッティングにより相手が減点1を受けたため10―8となり、シーサケットの反撃を許した7回は9―10。ここまではジャッジ3人もほぼ同じ採点をしており、全て66―65でロマゴンの1点リードとなっている。
 問題は8回以降だ。浜田氏が8回と11回をシーサケット、9回と10回をロマゴン優勢としたのに対し、ジャッジ2人は8〜11回が全てシーサケットのラウンド。残る1人も、8回はロマゴンながら9〜11回はシーサケットを支持した。そして、シーサケットが終始逃げ回った最終12回は全員がロマゴンに10―9をつけ、前述のスコアとなった。
 つまり、9回と10回の採点が勝敗の分かれ目なのだが、ロマゴンがバッティングで激しく流血していたため、9回は開始直後にドクターチェックが入っている。テレビ映像では2つのラウンドともロマゴンが手数も精度も上回ったように見えたものの、浜田氏は「あれだけ出血していると打たれているイメージを与えてしまい、どちらが優勢か判断しづらいラウンドではシーサケットにポイントがいった可能性がある」と言う。ジャッジはシーサケットのパンチが見た目よりもダメージを与えているとの印象を受けたのかもしれない。そして、一度優勢と採点すると、次のラウンドも引きずられて同じ判断を下してしまいがちだ。9回開始後のドクターチェックが、ロマゴンにとって不利な採点につながった可能性は少なくない。
 ロマゴンは再戦を希望しているが、無敗記録が途切れ、王座とともにパウンド・フォー・パウンド(PFP=全階級を通じて最強を決めるランキング)1位からも陥落。2戦続けて苦戦を強いられたため、スーパーフライ級での適性も疑問視されることになった。PFP1位だからこそ対戦を熱望し、年末のビッグマッチを計画していたWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)もショックを隠せず、インスタグラムに「これでスーパーフライ級にとどまる理由がなくなった」とつづっている。軽量級の今後の行方にも大きな影響を与えた判定だったことは間違いない。

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