2017年2月8日水曜日

前人未到の領域へ、井上尚弥

岩手日報 2017年2月8日朝刊
ニッポン スポーツ人の肖像
プロデビューから12戦全勝 ボクシング 井上尚弥
前人未踏挑む「怪物」
  「怪物」が無敗街道をひた走っている。世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級王者の井上尚弥(23)=大橋=は昨年末に4度目の防衛に成功し、戦績を12戦全勝(10KO)とした,本場の米国進出に期待が高まる中「ここまでは驚くほど順調,これからも燃えるような試合をしてファンを喜ばせることが使命」と決意を語った。
 世界にその名をとどろかせたのは現王座を奪取した2014年12月のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦だ。世界王座を27度防衛し、ダウン経験なしという強敵を2回KO勝ちと圧倒した。最後の一撃の左ボディーなどで計4度ダウンを奪い、日本最速の8試合で世界2階級を制し「自分の実力を示し、インパクトを残せる試合ができた」と振り返る。
その後も1位の挑戦者を3戦連続で退けた。そして元世界王者河野公平(ワタナベ)と戦った年末の試合では相手にわざと攻めさせ、鮮やかなカウンターから6回TKO勝ちを収め「完璧」と自画自賛する試合運びだった。
 プロ転向時に「怪物」と名付けた元世界王者でジムの大橋秀行会長は「初めて見た小学5、6年生の時に世界チャンピオンになる子だと思った。規格外で最高の選手」と述懐する。強打、スピード…、全てが一級品で異名にふさわしい戦いを披露してきた。
 ボクサー人生は自宅の一室から始まった。アマチュアで競技を経験した父真吾さんの練習場で、小学1年でグローブを手にした。2歳下の弟拓真(大橋)とともに後にジムを開く父の厳格な指導で基礎をたたき込んだ。
 神奈川・相模原青陵高校時代アマ7冠に輝いた。ジムの先輩で世界3階級制覇の八重樫東(大橋 黒沢尻工高-拓大)は「高校生の時に化け物になっていた」と拳を交わした当時を思い起こす。

 改めて目標を問うと「35歳まで続けること。それがいろんなことにつながると思う」と答えた。前人未到の領域へ、大橋会長は「日本の伝説の選手で、それはまだ始まったばかり」と日本ボクシング界の期待を代弁した。

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