2017年2月24日金曜日

知事講演

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インターネット知事室 平成29年2月23日
内外情勢調査会盛岡支部懇談会における知事講演「いわてソフトパワー戦略 ~考え方と展開~」
 ID番号 N52444 更新日 平成29年2月23日 とき:平成28年12月6日 ところ:ホテルロイヤル盛岡
はじめに
 東日本大震災津波から5年9か月が経過しようとしています。東日本大震災津波、そして8月30日の台風第10号災害により犠牲になられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 また、東日本大震災津波発災以降、全国、さらには海外から寄せられました多くの御支援に改めて感謝申し上げますとともに、先の希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の開催に当たり皆様からいただきました御支援、御協力に御礼を申し上げます。
 東日本大震災津波からの復興におきましては、整備を進めている災害公営住宅は本年度末までに約8割が完成します。また、被災した県立病院にあっては、本年度、大槌病院と山田病院が開院し、高田病院は来年度に開院の予定であるなど、着実に復興の取組を進めているところです。
 一方、依然として岩手県だけで1万5千人以上の方々が応急仮設住宅等での生活を続けている状況にあり、恒久的な住宅への速やかな移行が復興の最重要課題となっています。
 引き続き、東日本大震災津波、台風第10号災害からの復旧・復興に、関係機関と連携しながら、被災地や被災者の実情に沿ってしっかりと対応していきます。
 さて、今日は「いわてソフトパワー戦略~考え方と展開~」と題しまして、復興と地方創生に通じます岩手県政の取組について講演させていただきます。いわてソフトパワー戦略の考え方について、そして県政におけるソフトパワーの展開について、という順でお話します。


《プロスポーツ等との連携》
 次に、プロスポーツチーム等との連携や、スポーツツーリズムによる地域活性化です。バスケットボールBリーグ2部の岩手ビッグブルズ、サッカーJ3のグルージャ盛岡、ラグビートップイーストリーグ・Div.1の釜石シーウェイブスが岩手県を本拠地として活躍しています。これらのスポーツチームと連携し、地域におけるスポーツ教育や応援イベントの開催などにより、各種スポーツの普及と競技力向上、地域とチームの一体感の醸成を図ります。
 また、プロ野球パ・リーグの年間MVPに選ばれた大谷翔平選手が岩手県出身であるということは、岩手にとって計り知れないほど大きな財産です。他にもプロ野球では、菊池雄星選手、銀次選手、畠山和洋選手、そしてサッカーJリーグの小笠原満男選手、プロボクシングの八重樫東選手、リオ五輪陸上日本代表の高橋英輝選手など、多くの県出身選手が国内トップクラスあるいは国際的な活躍をしています。
 全国、そして世界に通じるトップアスリートの育成が、岩手にとって現実的に求められる政策テーマとなっています。スポーツを通じて更なる国内外との交流の拡大や経済効果の拡大を目指します。「いわてスポーツコミッション(仮称)」を設置し、各種競技大会やスポーツ関連イベントを積極的に誘致していきます。

おわりに
 おわりに、岩手の幸福に関する指標の策定に向けた取組を紹介します。
 今の岩手県の総合計画、いわて県民計画は、平成21年から平成30年までの10年間の計画で、あと2年ちょっとの間に次の総合計画を策定しなければなりません。
 現行計画がつくられた頃は、日本全体の長期経済停滞が地方を著しく疲弊させ、岩手でも雇用の低迷、県民所得の低迷、人口流出の増大が深刻で、リーマンショックがそれに追い打ちをかけていました。それ故、経済的な危機の克服を強調する内容の計画になったと思います。
 その後、東日本大震災津波を経験し、復興を進めながら岩手県民は県民所得の向上や雇用の改善を成し遂げ、一方で、人の生き死にに関わるような深い価値を見つめてきました。
 経済成長は、必ずしも人々の幸福とはつながっていないとの研究結果もあり、物質的な豊かさだけではない様々な要素に着目することが重要とも考え、「岩手の幸福に関する指標」を策定することとしました。
 先月11月4日に「岩手の幸福に関する指標」研究会の中間報告書を公表しています。この中間報告では、幸福に関連する領域として家族や健康など非経済的要素が盛り込まれているほか、主観的指標と客観的指標で構成するとするなど「岩手の幸福に関する指標」について体系的に考え方をまとめていただいています。
 その中では、「岩手らしさ」として、「つながり」を表す新たな指標としてソーシャル・キャピタルや協調的幸福感などを提案いただいています。ソーシャル・キャピタルというのは、人付き合い等のつながりの度合いを把握しようとするものであり、また協調的幸福感というのは、他者の幸福が自らの幸福にどのような影響を与えるかを捉えようというものです。
 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という宮沢賢治の言葉が広く共有されている岩手ならではの幸福像を描くことができればと思っています。今後、幸福に関連する新たな設問を取り入れた県民意識調査も実施しながら次期総合計画に向けた検討を進めていきます。
 幸福の問題は雲を掴むような話で、果たして行政が取り組むのにふさわしいのかと思う向きもあるかもしれません。しかし、日本国憲法第十三条には、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利が明記されていて、これはアメリカ独立宣言にも記されているものです。
 デモクラシーの原点、立憲主義の要である幸福追求権をしっかり踏まえ、その地域、その時代なりの幸福追求を工夫していくことは、地方自治、地方行政においても重要であろうと考えます。今、日本で立憲主義が動揺し、世界でデモクラシーが危機に直面している中で、自由と民主主義を本質から理解し、それを守ろうとする姿勢を岩手県が示すことは、大きなソフトパワーになるのではないでしょうか。
 以上、ソフトパワーという視点から岩手県の取組を様々紹介してきました。中でも、今般の希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の成功が、自信と誇り、そして希望を岩手県民に与え、そのレガシーはソフトパワーの大きな源泉となるでしょう。
 今後の県政運営においても、ソフトパワー戦略の考え方や視点を重要な行政運営上の方策として位置付け、岩手県の文化的魅力と道義的信頼を高めながら、復興とふるさと振興を力強く推し進めてまいります。
 御清聴ありがとうございました。

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