2014年11月28日金曜日

マルチ世界戦、これも時代の流れ

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スポナビ 2014年11月28日 13:30
30・31日で井上尚、内山ら世界戦7つ
12月のボクシング興行見どころ
井上尚がプロ8戦目で立ち向かう大きな壁
「すごい時代になりましたね」
 ワタナベジムの新ジムのお披露目を兼ね、25日に行われた公開練習の際に内山高志(ワタナベ)が思わずもらしたように、これだけの世界戦が集中開催されることは過去、国内では例がない。12月30日、31日に東京と大阪で計7つ。大阪の興行で現在交渉中と言われるもうひとつが加われば最大8つ。いずれにしても2012年の大みそかの5つを超えることになる。個人的にはもったいないと思ってしまうのだが、テレビの大みそかの特番として組まれるマルチ世界戦の開催も今年で4年目。これも時代の流れというべきか。

“年末の顔”と言えば、東の内山、西の井岡一翔(井岡)だったが、今年の最注目カードは井上尚弥(大橋)がオマール・ナルバエス(アルゼンチン)に挑戦するWBO世界スーパーフライ級タイトマッチになる。30日に東京・東京体育館で開催される『ボクシングフェス2014 SUPER BOXEO』の掉尾を飾る一戦は、日本のワンダーボーイと軽量級屈指の技巧を誇る歴戦の王者という構図。井上はプロキャリア8戦目(7戦全勝6KO)で、とてつもなく大きな壁に立ち向かうことになった。
 ナルバエスは現在16連続防衛中。WBOフライ級王者時代の11度を合わせれば、通算27度もの防衛記録を持つ。世界戦だけで30戦というキャリアに加え、アトランタ(1996年)、シドニー(2000年)と、2大会続けてオリンピックに出場し、世界選手権では銀と銅の2つのメダルを獲得するなど、輝かしくも巨大なアマチュア実績を残している。46戦(43勝23KO1敗2分)のキャリアで唯一、敗れているのは11年10月、後の5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)のバンタム級王座に挑んだ一戦のみ(判定負け)で、39歳の今も熟成された技巧に陰りは見られない。
 21歳になる4日前の今年4月に6戦目でWBC世界ライトフライ級王者となり、9月に初防衛にも成功した井上はベルトを返上。一気に2階級上げての挑戦になるが「スーパーフライ級が自分の適正階級」と言う。試合直前は体重を落とすことで手一杯だったライトフライ級時代と違い、「最後まで動けるので楽しみ」と万全のコンディションで臨めることを歓迎している。井上の能力がどれだけ発揮されるのかと楽しみな一方、スーパーフライ級のパンチに対する耐性の面で不安は残るが、ナルバエスをはっきり上回るのがスピードだ。「ディフェンスが鉄壁というイメージ」の王者に対し、スピードを最大限に生かした“打たせずに打つ”井上のボクシングを存分に体現したいところである。
 発表会見が行われた5日の時点では「ガードが固いので、ボディで倒すのが理想」と話していた井上だが、24日には来日していたドネアからナルバエス攻略法を直接アドバイスされ、イメージを膨らませている。勝つだけでも大変なことだが、もし難攻不落のナルバエスを完全に崩すことができたら、これはもうとんでもない快挙ということになる。

八重樫、リナレスがそれぞれ3階級制覇かける
 30日の東京体育館では、八重樫東(大橋)とホルヘ・リナレス(帝拳)がそれぞれ3階級制覇の懸かる王座決定戦に臨む。9月にローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との激闘に敗れた前WBC世界フライ級王者の八重樫は、井上が返上したWBCライトフライ級王座の獲得を目指す。ポイントはミニマム級から2階級上げて、一度フライ級の体をつくってから、また1階級下げることだが「過去の数々の名選手でも上げて下げて失敗した例は多い。だからこそ、獲れれば達成感があると思う」と、モチベーションのひとつに変えるところが八重樫らしい。対戦相手で同級1位のペドロ・ゲバラ(メキシコ)は「ボディワークよりステップとガードでよけて、距離をキープする選手。長身で、崩しにくいタイプだと思うが、そこを崩していかないと勝利は遠のく。今年は1勝1敗。勝利で締め括って、いい年にしたい」と抱負を語った。
 現在、WBC世界ライト級1位のリナレスは同級2位のハビエル・プリエト(メキシコ)とのWBC世界ライト級王座決定戦に臨む。ベネズエラから来日し、17歳でデビュー。プロボクサーとして育った日本は「私の国であり、私のホーム」とリナレスは言う。フェザー級(WBC)はラスベガス、スーパーフェザー級(WBA)はパナマで獲得しており、世界王座に挑む試合を日本で迎えるのは初めて。唯一の日本での防衛戦で、まさかの1ラウンドTKO負けを喫しているリナレスは「日本に対し、勝利の約束を果たす気持ちでリングに上がる」と11年10月以来、2度目のチャンスでの3階級制覇を誓った。
 他にも、ロンドン五輪金メダリストで現在はWBC世界ミドル級8位の村田諒太(帝拳)のジェシー・ニックロウ(アメリカ)とのプロ6戦目、井上尚弥の弟でWBA世界ライトフライ級6位の井上拓真(大橋)と、オマール・ナルバエスの弟で12年11月、五十嵐俊幸(帝拳)のWBC世界フライ級王座に挑戦したネストール・ナルバエス(アルゼンチン)との兄弟対決、井上尚弥とは同学年で、9月に元世界王者のデンカオセーン・カオウィチット(タイ)に2ラウンドKOで快勝したWBA世界スーパーフライ級10位の松本亮(大橋)と、IBF同級8位のルサリ・サモール(タイ)の世界ランカー対決と、豪華ラインアップが揃う30日の興行はフジテレビ系列で中継される。

V8王者・内山「右を打ち抜ける」と調子も好調
 31日の東京・大田区総合体育館もトリプル世界戦。世界王者として、4年連続で大みそかのメインを務めることになったWBA世界スーパーフェザー級王者の内山は、丸1年ぶりのリングに9度目の防衛戦を迎える。挑戦者は同級9位のイスラエル・ペレス(アルゼンチン)。ランクは下位ながら、内山と同じ35歳のペレスはシドニー五輪に出場しており、「アマチュアの実績は自分より上」とV8王者は敬意を示す。
「世間から忘れられたころに試合をする」と冗談めかすが、常に「1日1日、強くなるのが仕事」と口にする内山はこの1年間、ハードなトレーニングと節制を変わらず自らに課してきた。痛めていた右拳の調子も良いようで「(右を)打ち抜けるようになったのは大きい」と話す。国内にとどまるべき器でないことは誰もが認めるところ。「来年は4カ月ペースで(3試合)やりたい」という中には、海外で力を示したいという切なる願いも含まれている。まずは目の前のペレス戦で「内山はやっぱりすごいなと思ってもらえる試合をしたい」と日本の絶対王者は意気込んでいる。
河野が初防衛戦、田口は世界初挑戦
 WBA世界スーパーフライ級王者の河野公平(ワタナベ)は同級5位のノルベルト・ヒメネス(ドミニカ共和国)との初防衛戦に臨む。当初、WBAから挑戦者に指名された亀田興毅は国内で試合ができない状況が続き、調整に時間を取られたこともあって、王座に返り咲いた試合以来、9カ月ぶりのリング。「世界戦ができる喜びをかみ締めて、何が何でも勝ちたい」と河野は“2度目”の初防衛戦に全力を注ぐ。
 トリプル戦の最初に行われるのはWBA世界ライトフライ級王者のアルベルト・ロセル(ペルー)に、同級9位の田口良一(ワタナベ)が挑む一戦。これが世界初挑戦の田口は昨年8月、井上尚弥に日本王座を奪われるも、フルラウンド奮闘し、逆に評価を高めた。ロセルはアトランタ五輪にも出場しているアマ経験豊富でプロキャリアも上回る36歳のベテランだが、田口は「こんなチャンスは2度とない。自分からアグレッシブに攻めて、必ず勝ちたい」と燃えている。大みそかの『THE BEST OF BEST』はテレビ東京が中継する。

大阪では井岡が3階級制覇見据えて前哨戦
 31日の大阪・ボディメーカーコロシアムでは井岡が元WBA世界フライ級暫定王者のジャン・ピエロ・ペレス(ベネズエラ)とのノンタイトル戦に臨む。陣営は3階級制覇を目指して、WBA世界フライ級王者のファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)と交渉してきたが、王者の負傷でまとまらなかった。来春の挑戦を見据え、井岡にとっては大事な前哨戦となる。
 さらに、ミニマム級で世界3団体(WBA、WBC、IBF)を制し、4団体制覇を目指す高山勝成(仲里)と日本同級王者で2度防衛中のサウスポー・大平剛(花形)とのIBF世界ミニマム級王座決定戦、元WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(井岡)のノンタイトル戦、日本スーパーフライ級王者の石田匠(井岡)の初防衛戦が行われる。大みそかの大阪興行はTBS系列で中継される。
6日の後楽園は日本の実力者が勢ぞろい
 6日に東京・後楽園ホールで行われる『ダイナミックグローブ』もトリプルメインイベント。WBC世界ライト級11位の荒川仁人(八王子中屋)と日本同級王者の加藤善孝(角海老宝石)の一戦は、新人時代の1勝1敗を受けての8年越しのラバーマッチ(決着戦)。サウスポーの荒川は昨夏のオマール・フィゲロア(アメリカ)とのWBCライト級暫定王座決定戦、今年3月のリナレスとのWBC同級挑戦者決定戦とアメリカで連敗したが、勇敢な戦いぶりが評価された。右ファイター型の加藤は現役日本王者で最多となる7連続防衛中と、国内で地力をたくわえてきた。国内ライト級トップ同士の激突は、プライドと意地を懸けた戦いになる。

 そのほか、東洋太平洋・日本ミドル級王者の柴田明雄(ワタナベ)に元王者の淵上誠(八王子中屋)の昨年5月以来の再戦(柴田の9ラウンド負傷判定勝ち)、元東洋太平洋王者の小國以載(角海老宝石)と昨年4月、マカオで元世界王者に判定勝ちしている石本康隆(帝拳)の実力者同士の日本スーパーバンタム級王座決定戦と、12月の先陣を切って行われる興行も盛りだくさんだ。ちなみに試合の模様はCS放送日テレG+(ジータス)で後日、録画放送される。

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