2013年5月25日土曜日

名勝負が生まれる瞬間


拳の記憶Ⅱ Number PLUS JANUARY 2013
レフリーだけが知っている「名勝負が生まれる瞬間」
記憶に新しい名勝負と言えば、井岡一翔と八重樫東が争ったWBC&WBA世界ミニマム級王座統一戦だろう。2012年6月20日、大阪ボディーメーカーコロシアムで行われた一戦を裁いたのが福地勇治である。・・・
 迎えた大一番は初回からアクシデントが発生した。井岡の右ストレートで八重樫の目が早くも腫れてしまったのだ。福地はラウンド終了後、リングサイドにいたWBCとWBAのスーパーバイザーに、腫れがパンチによるものだと報告した。「これは最後までいかないかもしれないな。そう思いながら、どうやったら最後まで行かせられるか、ということも考えました」頭に浮かんだのは前日のルールミーティングでの確認事項だった。「WBCの場合、ドクターにもレッドカードを出して試合を止める権限がある。でも今回はWBAとの統一戦なので、試合を止める権限はレフリーだけ。そう申し合わせました。すべて私に託されていたわけです」
 福地は八重樫の腫れに注意を払いながら、目の前で繰り広げられるファイトに感心せずにいられなかった。「これはものすごいトップレベルの試合だと感じていましたね。腫れの大きい八重樫くんが苦しいように見えたかもしれないけれど、井岡くんは前半に何度も折れそうになっていましたよ。効いているのが分かった。でも井岡くんは引かない。ここで負けられないという気持ちがすごく伝わってきた。八重樫くんもそうですよ。お互いがお互いの力を引き出しあっている。そんな試合でした」
 福地は6回ト7回に八重樫の腫れの状態をドクターにチェックさせた。ただストップする気はさらさらなかったという。「もちろん八重樫くんが下がったりすれば止めようと思ってました。スポーツの域を超えたらボクシングじゃありませんから。でも八重樫くんは戦っていた。目が見えなかったら、あんなボクシングをできるはずがない。両方ともチャンピオンですよ。お前ら存分に戦えと。そんな気持ちでしたね」
 試合は判定までもつれ込み、井岡が僅差で国内史上初の統一戦を制した。・・・

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