2024年2月2日金曜日

“天才アマ”須佐勝明

 https://number.bunshun.jp/articles/-/860494

NumberWeb ボクシングPRESS

井上尚弥が「怪物」と評した“天才アマ”は、なぜプロに行かなかった? ロンドン五輪出場・須佐勝明が明かす、23歳で一度引退した理由

杉園昌之 2024/02/01 11:00




井上尚弥が自著『勝ちスイッチ』(秀和システム)で「怪物」と評した須佐勝明。アマの天才ボクサーは23歳で一度、競技人生を引退する。その理由とは――。(Number Webインタビュー全2回の第1回/後編へ続く)


モンスターが認めた「怪物」

 かつて井上尚弥が「怪物」と評した天才アマチュアボクサーがいた。2階級で4団体王座統一を果たす「モンスター」の異名が、世界のボクシング界にとどろく前の話である。プロ入り前の高校3年生だった井上は、9歳上のその先輩に教えを請い、「第2の師匠」として仰いだという。あれから齢を重ねて、現在は39歳。2012年ロンドン五輪男子フライ級(52kg)日本代表の須佐勝明は、「師」という言葉を聞くと、照れ臭そうな笑みを浮かべていた。井上本人から直接、言われたわけではないが、人づてに耳に入れたことはある。

「そう言ってもらえるのは、ありがたいですね。当時の尚弥君は左のジャブで組み立てるときに被弾する場面もあったので、自分のパンチだけを当てるために細かいバックステップのアドバイスをしたんです。距離をうまくごまかすような戦い方を少し教えると、より相手のパンチをもらわなくなりました。もともと父親の真吾トレーナーと磨いてきたものもあり、どんどん強くなっていって」

『打たせず打つ』は須佐の信条。プロの猛者たちとスパーリングを繰り返し、高校、大学、社会人と200試合以上経験して築き上げたものである。アマボクシング界ではレジェンドと呼ばれ、センスあふれるステップワークで見る者を魅了した。


原点は「絶対にあいつらをぶっ飛ばしてやる」

 幼少期から英才教育を受けてきたわけではない。福島県の会津若松市で生まれ育ち、将棋、相撲、スキー、ソフトテニスなどに興じ、中学校時代は長距離ランナーとしても活躍。会津地方の駅伝大会ではエース区間の1区を任されたほど。初めてグローブを手にしたのは、会津工業高校に入ってからだ。親友に誘われて、ボクシング部に入部。運動神経には自信を持っていたが、リングの上では勝手が違った。スパーリングで先輩たちにコテンパンにされてしまう。負けん気の強いやんちゃ坊主は、我慢ならなかった。


「絶対にあいつらをぶっ飛ばしてやると思ったんです。泣くほど悔しくて練習に打ち込みました。そうしたら、1年生の県大会、東北大会とすんなり優勝しちゃって。これは自分に向いていると思っていたら、2年時にインターハイに出場すると1回戦で敗退。そこから、本気になりました。次は絶対にインターハイで優勝してやるぞって。気がつけば、どっぷりはまっていましたね」


八重樫さんのようなボクシングがしたい

 高校時代にお手本としたのは、同じ東北地区で全国的な実績を残していた2学年上のボクサー。足をうまく使い、絵に描いたようにヒット・アンド・アウェーを実践するスタイルに目を奪われた。のちに世界3階級制覇王者となる八重樫東あきら(現大橋ジムトレーナー)である。

「八重樫さんのようなボクシングがしたいなと思いました。本当にかっこよくて。自分のスタイルを築いていく上で基盤の一つになりました」

 高校生の須佐にとって、インターハイ制覇がすべてだった。当時は五輪出場も、プロの世界チャンピオンになることも微塵も考えていなかった。最大のライバルは、拳闘の世界に誘ってくれた幼馴染の遠藤広大。階級こそ違ったが、同期の仲間よりも大会で良い成績を残すのがモチベーションになっていた。

「高校2年時は遠藤がインターハイのベスト8で僕は1回戦負け。3年時もあいつが優勝で、僕はベスト8でした」


後楽園ホールで試合をしたかった


村田諒太には「絶対に舐められたくなかった」

プロのジムから出禁になったことも

オリンピックに一緒に行こう

10くらいのプロジムからオファー

ロンドンに行ける気がしてきて


#2に続く


https://number.bunshun.jp/articles/-/860495

NumberWeb ボクシングPRESS



村田諒太が井上に「須佐先輩に教えてもらいな」

「須佐さーん」とかわいい感じで来る

俺もプロへ行ったら…

井上が本当にすごいのは…

パンチの命中率は、ずば抜けています

アマチュア時代には“隠れていた”井上の真価

階級の壁は、むしろ「新たな井上尚弥が見えるかも」

自分も違う場所で負けないようにしよう

結局、僕はボクサーなんだな


2023年12月24日日曜日

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「尚弥、頼むからジムに来ないでくれ…」井上尚弥に感じた“本当の恐ろしさ”…スパーリングで戦った八重樫東が証言「次の動きが読まれていく」

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八重樫東「やってやるよ、こいよ」両目がパンパンに…いま明かす“怖かった”あのロマゴン戦の心中「僕はヤンキーではないけど」「尚弥と似ていた」

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「目がふさがった状態で…壮絶な打ち合い」日本人が思わず感情移入した…八重樫東と井岡一翔“あの激闘”の真実「負けたのに周囲の反応が」

森合正範

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「あごが外れて…ぶらんぶらんと」161cmの伝説的ボクサーが“ボコボコにされた”世界戦「普通の人なら失神している」八重樫東の衝撃

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「大谷翔平君と尚弥はゆとり世代の成功例」大橋秀行が語る井上尚弥の“本当の強さ”とは? マス・ボクシングで感じた衝撃「ロペスと同じだ…」

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「ナオヤはグレート」“井上尚弥20~23歳に敗れた男達”が味わった怪物の正体「それは知らなかった…」なぜ“KO回避”したのにガク然?

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「エグすぎる筋肉」解剖学者が驚愕…井上尚弥“フルトン戦TKO勝利”を生んだ究極肉体のヒミツ「上腕と前腕のサイズ感が変わらないのはすごい」

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井上尚弥のKO量産は「筋力によるものではない」現トレーナー・八重樫東が語る“間近で見たモンスター”の天才性「井上尚弥のままで引退させる」

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井上尚弥30歳に…弟・拓真が「夢だった兄弟同時王者に」と語った日、世界的識者が「イノウエはNo.1ボクサー」と絶賛する理由とは

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〈井上尚弥の次の世界王者へ〉異色のボクサー武居由樹が“初めて手こずった”防衛戦から見えた期待感 那須川天心との対戦を望む声も大きいが…

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「今だから言えますけど…」モンスター井上尚弥29歳が告白する“減量のキツさ”「12月のバトラー戦、前ももがつりそうだった」

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「背筋も喜んでるわ」井上尚弥29歳が語る“自分の筋肉”…なぜ先輩・八重樫東にトレーニングを依頼した?「お尻がデカイとよく言われます」

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[ロングインタビュー]井上尚弥「4団体統一ボディはまだ進化の途中」

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「もちろん断然優位だ」井上尚弥に死角なし? 米リング誌の編集長も確信する“4団体統一”「バトラー戦以降もエキサイティングな未来がある」

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日本人王者対決は激闘に…2団体統一・寺地拳四朗の名参謀が語った勝因とは?「京口選手の怖いところは…」「あの回は助かりました」

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師匠・辰吉の薬師寺戦を超えられるか? 京口紘人が“因縁の相手”寺地拳四朗との日本人王者対決を語る「立場は自分の方が格上」

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「那須川天心との対戦はある?」K-1出身・武居由樹26歳の答えは…5連続KO勝ちでタイトル奪取も「ボクサーとしての完成度は40%」

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K-1王者からボクシング界の頂点へ…武居由樹をハードに育て上げた“古川会長の教え”とは「小学校の友達に『全然違う人だね』と(笑)」

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《衝撃KOデビュー》“次世代モンスター”今永虎雅(22)とは何者か? 井上尚弥を上回るアマ戦績も「全く別の世界。騒がれるのは苦手」

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[スペシャルインタビュー]井上尚弥「次なる王道へ」

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“スーパー高校生”井上尚弥の衝撃… 国内トップクラスのプロを“ボコボコ”に「そのときですね、尚弥はかなりのところまでいくんじゃないかと」

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「小学生のころはお父さんも選手で一緒に練習」井上尚弥の才能はどんな環境で磨かれたのか?「飢えたような目」をした父と歩んだ少年時代

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“武尊のライバル候補”から“井上尚弥の同門”へ…武居由樹が3連続秒殺KO勝利で証明した「元K-1王者がボクシングでも強い理由」

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「最後は転んでゴールすると思いますよ」激闘王・八重樫東が語っていた“引退を決断する日”

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カッコいい引退はできないので……。

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<タフファイターたちの記憶>

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“侍ファイター”田口良一。

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テレビ局の利害、会場、ベルト……。田口と田中の統一戦を阻む要素とは。

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テレビ局の利害、会場、ベルト……。

田口と田中の統一戦を阻む要素とは。

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<徹底レポート>

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八重樫東から井上尚弥へのエール。

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世界王者たちにも世代交代の波が。「U-15」勢の台頭に内山高志は――。

ボクシング拳坤一擲


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八重樫「生き残りました」の初防衛。

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山中慎介がまさかの連続ダウン――。

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井上は米進出目前、八重樫は激戦必至。

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再起戦で株を上げた井岡。三つ巴戦は実現するか。

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見る者の心を打つ業の深い“探究心”。

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八重樫東 


ファンに喝采を浴びた

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6つの“数字”で振り返る

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井岡vs.八重樫の激闘を徹底検証。

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渋谷淳

Jun Shibuya

ボクシング2012/06/21


史上初の2団体王座統一戦、

“大穴”は下馬評を覆せるか。

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渋谷淳

Jun Shibuya

ボクシング有料2012/06/19


偉大な王者の前で感じた

拳をめぐる時代の違い。

~ボクシング界の現状を憂う~

前田衷

Makoto Maeda


2023年12月23日土曜日

究極ボディーをゲット

 https://hochi.news/articles/20231222-OHT1T51237.html?page=1

井上尚弥“八重トレ”で体重が増えてもスピードが落ちない究極ボディーをゲット「つまり状態は前回より上」

2023年12月23日 5時0分スポーツ報知 # スポーツ# ボクシング

◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)王座統一戦12回戦 WBC&WBO王者・井上尚弥―WBA&IBF王者マーロン・タパレス(12月26日、東京・有明アリーナ)


 日本男子2人目の世界4階級制覇を成し遂げた井上尚弥。階級アップを念頭に入れて、バンタム級だった2021年秋からは、元世界3階級制覇王者の八重樫東トレーナー(40)の指導を受け、さらなる肉体強化を図っている。“八重トレ”は単なる筋肉強化ではなく、体全体を連動させてパンチの破壊力をいかに増大させるかというもの。体重が増えてもスピードが落ちないという、理想的な“不条理”がモンスターをさらに強くする。

 まるで筋肉のヨロイを着けたような井上のボディー。大橋秀行会長(58)はほれぼれするような目で見つめる。「今回は練習量が増えた。それもまた進化です」。ここ数試合は70~80回だった実戦練習が116回に増えた。「バンタム級では体重を落とすためだけの練習もあったが、今回は試合のためだけの練習。スーパーバンタム級の体になっている。普通、階級を上げればスピードは落ちるが、体重が増えてもスピードは生きている」。それを可能にした一つが八重トレだ。

 バンタム級だった21年11月、井上は「まだまだ筋肉はつけられる」と、今後の階級アップも念頭に八重樫氏へ指導を願い出た。同氏は自身の経験や様々な専門家のもとへ足を運んで知識を蓄え、独自のトレーニング法を考案。当初、井上には「できない動きもあった」という。ボクシングに特化した動きは抜群だが、バスケットボールなどの球技は「普通だった」。だが、適応能力も高く「すぐにできるようになった。できない動きをやれるようになることは、そのまま彼の“幅”になる」(八重樫氏)。

 当初は練習のきつさに、井上は筋肉痛を訴えてスパーリングを休んだこともあったが、八重トレを重ねるうち、成果が表れた。1か月後のディパエン(タイ)戦の前にはSNSで「体脂肪率は3%ジャスト」と明かしている。

 「筋肉をつけたからといって、パンチ力が上がるものではない。同じ体重同士で戦うのだから。体重をどれだけパンチに乗せられるか、なんです」と八重樫氏。キャンバスをしっかりと足でとらえ、腰→上体→腕と動きを連動させることで、無駄なくスムーズに体重が乗ったパワーが拳に伝わる。「トレーニングにはそれぞれの目的があり、その時に必要だと思う練習をさせる」。規定体重は1・8キロ増えたものの、それは筋肉量につながるから、スピードを落とさずにパワーも増す“不条理”が成り立つのだ。

 井上もそれを自覚している。「フルトン(7月、米国)戦から、コンディション作りに伸びしろがあると感じていた。転向2戦目の今回は、より筋肉量を残しながら減量している。調整の段階で動けています。つまり(状態は)前回より上」。井上には勝利の2文字が見えている。(谷口 隆俊)

 ◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年2月25日、岩手・北上市生まれ。40歳。黒沢尻工3年で高校総体、拓大2年で国体優勝。アマ戦績は56勝(15KO・RSC)14敗。2005年3月にプロデビュー。11年にWBA世界ミニマム級王座を獲得。13年にWBC世界フライ級、15年にIBF世界ライトフライ級王座を奪取し、国内3人目の世界3階級制覇を達成した。20年9月に現役引退。通算戦績は28勝(16KO)7敗。現在は大橋ジムのトレーナー。

大橋会長(左)とポーズを決める井上尚(大橋ジム提供)

大橋会長(左)とポーズを決める井上尚(大橋ジム提供)

■練習打ちあげ 〇…井上が22日、横浜市の大橋ジムで、世界戦前最後の練習を実施。練習を見守った大橋秀行会長(58)は自身のSNSで「バッチリの仕上がりです 26日楽しみにして下さい」などと手応えを口にした。井上は21日までに、2度目の抜き打ちドーピング(禁止薬物使用)検査を受けたことをSNSで報告。タパレス陣営も、ドーピング検査の模様を収めた写真などをSNSで公開するなど、ともに態勢は整った。


2023年12月21日木曜日

驚嘆させる比類なきパフォーマンス

 https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/fight/2023/12/21/post_54/

web Sporttiva

井上尚弥を鍛え上げる八重樫東と鈴木康弘 ふたりに白羽の矢が立った理由と効果とは?

2023年12月21日 10:15 公開

本間 暁●取材・文 text by Homma Akira

山口裕朗●撮影photo by Yamaguchi Hiroaki

見る者多くを驚嘆させる比類なきパフォーマンスは、日頃の鍛錬があるからこそ。そして今の井上尚弥のフィジカル面を2年前からつくり上げているのが八重樫東と鈴木康弘というふたりのトレーナーだ。共にこれまでの経験で得た叡智で、時に「怪物」を追い込むことで井上の潜在能力を引き出してきた。

12月26日、マーロン・タパレス(フィリピン)とのスーパーバンタム級王座4団体統一戦(東京・有明アリーナ)を迎える井上尚弥の凄さは、どこにあるのか。ふたりのトレーナーの視点から語ってもらった。

「井上尚弥・解体新書」前編

【モンスターを追い込むふたりのトレーナー】

 猛牛さながらの巨体を誇るサンドバッグが、ズシンドシンと重低音の唸りを上げる。10秒、20秒──それを奏で続ける"モンスター"井上尚弥は、いつしか苦悶の表情を浮かべ、ついには雄叫びを上げて、終了と同時にその場にへたり込む。

 無呼吸状態で、一発一発をしっかりと強打するサンドバッグ連打。「尚弥のあんなに疲れた姿を見るのは初めて」と大橋秀行会長も驚きを隠さない。あの井上尚弥が渾身のパワーでぶん殴り続けるのだから、負荷のかかり様は推して知るべし、だろう。

 試合はおろか、どんなにキツイ練習でさえも、歯を食いしばることこそあれど、辛い表情すら見せるのを拒否してきた。そんな"気合の男"の意地とプライドが、いともたやすく果ててしまう。

「はいはい、まだまだ!」

「もっともっと!」

 前から後ろから、拍手で連打のテンポを煽り、ジム内に響き渡る大声で檄を飛ばす。井上尚弥が苦しむ姿を眺めながら、「してやったり」とばかりに満足気な笑みを浮かべる。

 八重樫東(40歳)と鈴木康弘(36歳)。拓殖大学の先輩後輩、それぞれ162cm、186cm好対照の体躯を持つ両トレーナーが現在、尚弥、その弟・拓真、従兄・浩樹という"井上トリオ"のフィジカルトレーニングおよび、試合前合宿の指揮を執る。

【週2回の"八重トレ"効果】

「尚弥に最も殴られた男」と苦笑交じりに自虐的に語る八重樫トレーナーは、ミニマム級、フライ級、ライトフライ級の世界3階級を制した名チャンピオン。日本王者から最初に世界王座を獲得した頃、まだプロデビュー前の高校生だった尚弥と火の出るようなスパーリングを開始し、それ以来の付き合いとなる。

 現役時代、自らの体を「実験台」と称し、名だたるフィジカルトレーナーの下で体を苛め抜き、そのノウハウを体に刻み込んできた。引退後も、ボクサーだけでなく著名な格闘家、武道家も多く集う野木丈司氏の階段トレーニングに参加し続け、「動ける体づくり」に勤しんでいる。尚弥のボクシングを、身をもって熟知している人物で、「トレーニングをやって見せることのできる人」という父・真吾トレーナーが望む絶対条件にも適う。

「サプリメントやコンディショニングの知識も豊富ですし、 "階級を上げて戦う"ことも知り尽くす人」(尚弥)に白羽の矢が立ったのは、2021年11月のこと。明言こそ避けているものの、尚弥はおそらく、この頃からすでにバンタム級を維持することがかなり困難だったのだろう。

「ここから上の階級は、骨格などのフレームが違ってくる」(尚弥)という意識、そしてさらにチャレンジしていこうという意志と覚悟、その表れだったと推察される。

 井上トリオが所属する大橋ボクシングジムには各種の器具が取り揃えられている。八重樫トレーナーが現役時代から必要なものを少しずつ集めていった成果だ。専門のトレーニングジムに通うとなると、費用もかかり、時間も取られてしまうが、ジムワークからの連動が、より効果を発揮するトレーニングもある。"タイムラグ"がマイナスになってしまう類のものだ。

 井上トリオは、八重樫トレーナーが作成するフィジカルトレーニング、通称"八重トレ"を週2回こなし続けている。効果はてきめんで、見た目もさることながら、いわゆるインナーマッスルが分厚くなった。

 尚弥も実戦を通して、"八重トレ"の手応えを感じ取ったのだろう。当初は「バンタム級のように、スーパーバンタム級にフィットするのにも4、5年かかるかも」と語っていたが、これについて口を閉ざすようになった。

 今年7月に尚弥とスーパーバンタム級の統一戦を戦ったスティーブン・フルトンは、「フィジカルを活かすスタイルの選手ではなかった」と尚弥は言うが、同級では大柄で1階級上のフェザー級転向も視野に入れていたフルトンのクリンチを弾き飛ばすシーンもあった。距離と間合いを巧みに操り、さらに世界でも稀有のパワーを発揮する強打の持ち主だけに、相手はクリンチすら選択できない。それもまた"ナオヤ・イノウエ"の特長だが、クリンチに成功しても吹き飛ばされてしまうのでは、対戦相手はもうお手上げ状態だ。

(つづく)

◆後編 井上尚弥のパンチングパワーの秘密

井上尚弥のフィジカル面と技術面における強化を2年前から指導する八重樫東、鈴木康弘の両トレーナーは、日常的に「怪物」の変化をつぶさに目にしている人物だ。ある意味、対戦相手以上にその凄みを間近で感じ取っているともいえるが、ふたりから見た井上尚弥の凄さは、どのような部分にあるのか。

「井上尚弥・解体新書」後編

【パンチングパワーの秘密】

「スーパーバンタム級でも井上尚弥のボクシングをさせること」。これがいちばん大切なのだと八重樫東トレーナーは言う。

「勝つためのフィジカルを作る=体を大きくする、当たり負けしない、ことじゃないんです。ボクシングはコンタクト競技ですが、接触しない時間の方が長い。そこでフィジカルを(うまく)使えばいいんです。尚弥はジャブがうまい相手にも(ジャブの)差し合いで負けない。彼の足があれば、出入り(相手との距離を詰めたり離れたりすること)できるスピードがあるし、当てる感覚もある。そこのフィジカルを強くすればいい。出入りの連動性やストップ&ゴーのスピード。それが強いのが井上尚弥ですから」(八重樫トレーナー)

 モデルは、あのマニー・パッキャオ(フィリピン)。フライ級からスーパーウェルター級までの10階級を股にかけた6階級制覇の歴史的王者だ。パッキャオは、階級を上げていってもスピードを失うどころか逆にアップさせ、なおかつ強打もいかんなく発揮した。そして、井上尚弥もまた、まったく同種のボクシングを体現している。

 今年初め、スーパーバンタム級に階級を上げることを機に「尚弥の強みと弱みをしっかり認識するため」、八重樫トレーナーは知己のアスリート研究チームに尚弥の『走る』『体を捻る』、『ダッシュする』等のフォーム映像を基に動作解析を依頼。そこで驚異の事実が判明したのだという。

「尚弥がなぜ強いパンチを打てるか。例えば、硬いゴムやチューブを捻っていくと反対側にブルンって反動で回りますよね。その動きが尚弥の体の中で起こっているそうなんです。具体的に言うと、足からの連動です。床をドーンって踏み込んだ力を足首、ふくらはぎ......と上にどんどんパワーが移動していく過程で、回転する筋肉が関節に突き当たるごとに逆回転を起こして大きな渦となっていき、最終的に上体から拳へと巨大化したパワーが伝わっていく。

 ひねる、ねじる。これは"回旋競技"のボクシングの体の使い方としてとても大切ですが、その力こそが彼のパワーの源なのです」

【5階級差も乗り越える】

 今年5月から正式にジムトレーナーとして加わった鈴木氏は、2012年ロンドン五輪ウェルター級の日本代表。地元・札幌で後進の指導にあたっていたが、「浩樹のトレーニングを見てもらえませんか?」と尚弥から直々に誘いを受けて一念発起した。高校時代の尚弥とは、全日本メンバーとして寝食を共にした間柄で、浩樹は拓大の後輩でもある。

 当初こそ浩樹へのマンツーマン指導をしていたが、そのバラエティに富んだメニューに八重樫トレーナーが着眼。「マンネリにならないよう、常に新しいことをさせたい」という意思に基づき、"八重トレ"やジムワークとの連動トレーニングを共有するに至った。井上トリオのみならず、4回戦の選手も含め、誰彼構わず巻き込んでいる。ジム内には野獣の咆哮や悲鳴が轟くが、選手たちは「めちゃめちゃキツイけど、良い練習です」と心地よさげに大量の汗を流す。ウズベキスタン、カザフスタン、キューバなど、アマチュア大国が行なっているトレーニングメニューが礎なのだそうだ。

「自衛隊体育学校時代の師匠、本博国監督に現役時代、僕が課されていたメニューなんです。僕は6、7セットやっていたんですが、八重樫先輩は『じゃあ10セットやらせよう』って(笑)」

 尚弥は高校時代から「パンチ力もフィジカルもバケモンだった」と振り返るが、久しぶりに会った彼には腰を抜かすことの連続だという。

「バランスボールをお互いの間に挟んで押し合うメニューがあるんですが、フィジカルに自信のある僕が負けてしまう。どれだけ足腰が強いんだ......って」

 スーパーバンタム級(53.53kg~55.34kg)vs.ウェルター級(63.51kg~66.68kg)超。5階級差。普通では"ありえない"話だ。

 6歳からボクシングを始め、今年で25年目を迎えている井上尚弥。彼が、いまもなお最も大切にしているのが「フォーム」である。

 足先から指の先まで、数センチ単位で美しさにこだわる。シャドーボクシングで入念にチェックし、自分にとって正しいバランス、タイミング、角度で、打っては動き、を丁寧に繰り返す。その姿は名工の鉋削りのごとき職人技。何度見ても、吸い込まれてしまう。

 そしてもうひとつ。彼には強いこだわりがある。

「たとえばパンチ一発や腕立て伏せ1回にしても、ひとつも無駄にはしたくないんです。だって、それが1度の練習、1週間、1カ月、半年、1年......って時間が経過すると、そのたった1度をしっかりやらなかった人との差って、ものすごく開いてしまうから」

 尚弥が昔から常々語ってきた言葉だ。裏を返せば、彼は1度たりとも無駄にしてこなかったという宣言でもある。この積み重ねこそが、"モンスターたるゆえん"なのだとつくづく敬服する。

「当たり前のことを当たり前にやる」

 最も困難で、尊いことである。


プロフィール

本間 暁 (ほんま・あきら)

1972年、埼玉県生まれ。専門誌『ワールド・ボクシング』、『ボクシング・マガジン』編集記者を経て、2022年からフリーランスのボクシング記者。WEBマガジン『THE BOXERS』、『ボクシング・ビート』誌、『ボクシング・マガジン特別号』等に寄稿。note『闘辞苑TOUJIEN』運営。


2023年11月11日土曜日

来週からタパレス対策

 https://www.nikkansports.com/battle/news/202311100001639.html

井上尚弥がスパーリング組み込む異例フィジカル合宿打ち上げ、来週からタパレス対策へ

[2023年11月10日21時25分] 日刊スポーツ

ボクシングWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者井上尚弥(30=大橋)が最速の2階級での4団体統一を見据え、異例のハードトレ合宿を敢行した。12月26日、東京・有明アリーナでWBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)との4団体王座統一戦を控え、10日に横浜市の所属ジムで5日間のフィジカル合宿を打ち上げ。自衛隊式「耐乳酸トレ」メニューとともに週3回のスパーリングも消化する過酷なトレーニングで肉体を仕上げた。

6日から始めた異例のハード合宿を打ち上げ、井上は「やり切りました」と充実した笑みを浮かべた。最終日はIBF世界スーパーバンタム級15位エリック・ロブレス(23=メキシコ)と6回のスパーリングを消化。6日、8日は5回だったが、この日はさらに1回を追加。井上は「疲れている中で上げていけるような予備タンクづくり」と意図を明かし、大粒の汗をぬぐうと即座にフィジカル練習を開始した。

元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナー(40)と12年ロンドン五輪ウエルター級代表で自衛隊体育学校出身の鈴木康弘トレーナー(35)による自衛隊式「耐乳酸トレ」メニューに取り組んだ。15秒間のサンドバッグ連打、腕立てからジャンプしながらのシャドー4連打を20秒間、八重樫氏の構えるバランスボール押しを10秒間、最後に15秒間のサンドバッグ強打を計5セットをやり抜いた。続いてミット打ち3回、全力で自転車トレ器具をこぎ続け、ギリギリまで追い込んだ。

ジム内合宿は3度目だが、実戦トレを導入したのは初めて。井上は「より負荷をかけられた。フィジカルの底上げ、気持ちの切り替えがメイン。来週からはタパレスをイメージして練習に入る」と強調した。2階級での4団体統一に成功すればテレンス・クロフォード(米国)に続き、2人目の快挙。クロフォードは8年3カ月かけて達成したが、井上がタパレスを撃破すれば5年7カ月と大幅に更新する最速記録となる。試合まで約1カ月半。「今は気にするのは体調とけが」。警戒心を強め、仕上げる構えだ。



ジム内フィジカル合宿を終えた

 https://www.sanspo.com/article/20231110-7T4YHIFCLVK3XEKKB33IL64B4A/

【ボクシング】井上尚弥、ジム内合宿終了「来週からはしっかりタパレスをイメージ」

2023/11/10 22:08 サンスポ

八重樫東トレーナー(左)の構えるバランスボールを全力で押す井上尚弥(大橋ジム提供)

プロボクシングのWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(30)=大橋=が6日から横浜市の大橋ジムで行っていたジム内フィジカル合宿を終えた。大橋ジムが10日、発表した。井上尚はWBA、IBF統一王者マーロン・タパレス(31)=フィリピン=との4団体王座統一戦(12月26日、東京・有明アリーナ)を控えている。・・・・・


https://hochi.news/articles/20231110-OHT1T51289.html?mode=photo&photoid=1

井上尚弥がジム内合宿打ち上げ 「来週からはしっかりタパレスをイメージして練習」

2023年11月10日 21時52分 スポーツ報知

◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)王座統一戦12回戦 WBC&WBO王者・井上尚弥―WBA&IBF王者マーロン・タパレス(12月26日、東京・有明アリーナ)

 WBC&WBO世界スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)が10日、横浜市の大橋ジムで行っていたフィジカル合宿を打ち上げた。

 WBA&IBF王者マーロン・タパレス(フィリピン)との4団体王座統一戦に向けて6日からジム内で行っていた合宿で、最終日はフィジカルメニュー前に、練習パートナーのエリック・ロブレス(メキシコ)との6ラウンドのスパーリングを消化。その後、八重樫東、鈴木康弘両トレーナーの指導で、フィジカル練習に取り組んだ。・・・・・


https://boxingnews.jp/news/104199/

井上尚弥がS・バンタム級4団体統一戦に向け短期集中合宿終了 フィジカル+初めてスパーも導入 2023年11月10日 21時52分 BOXING NEWS

 12月26日(東京・有明アリーナ)にS・バンタム級4団体統一戦を控える同級2団体王者の井上尚弥(大橋)が6日から横浜市内のジムで行っていたフィジカル合宿を10日終了。その模様が大橋ジムより届いた。

 マーロン・タパレス(フィリピン)との4団体統一戦に向け、井上はこの日、エリック・ロブレス(メキシコ)と6ラウンドのスパーリングを消化。その後、八重樫東、鈴木康弘トレーナーの指導のもとフィジカルトレーニングを行った。・・・・・


2023年11月8日水曜日

今日の朝刊

 岩手日報 2023.11.08 朝刊


  「激闘王」の覚悟



八重樫さん熱弁 花巻東高で講演

https://www.iwate-np.co.jp/article/2023/11/8/153341


 ボクシング元世界3階級王者の八重樫東さん(40) “北上市出身は7日、花巻市の花巻衷咼で講演した。闘志あふれるスタイルで「激闘王」と称された現役時代を振り返り「覚悟」を持って取り組む大切さを説いた。・・・