岩手日報 2020.9.6(日)
風土計
日本ボクシング史上最強とうたわれた元世界王者ファイティング原田さん最大の敵は減量だった。水をロにしないよう、水道の元栓を閉められたという逸話がその過酷さを物語る▼それとは逆に先日、引退を表明した八重樫東さん(北上出身)は黒沢尻工高入学当初、軽すぎて困ったといつ。背丈は160センチに満たず、体重はアマ最軽量のモスキート級でも下限に届かない30キロ台▼友達に誘われ、ボクシング部の門をたたくと「おまえたちには無理だ」。当時指導した辰柳祐司さん(黒沢尻工高教)はあえて厳しい言葉をけた。ただ「小学生のように」小さく細い八重樫さんに対しては半分、本音だったと明かす▼それが世界3階級制覇を遂げる。その栄光以上に負けても果敢に打ち合い、怖がらず、逃げないスタイルがファンを魅了した。試合後、大きく腫れた両まぶたがその証しだった▼コロナの影響で4月、県校総体の中止が決まると、辰柳さんが珍しく弱音を吐いた。「もういいや」。 地元インターハイに向け、汗水流した3年生の努力がフイになり嫌気がさした▼間もなく 教え子から電話があった。「1、2年生が いるじゃないですか」。諦めたら終わり。 何度倒されても立ち上がればいい。不屈の激闘王のファイトに勇気を得た人は多かっ ただろう。それだけに引退が惜しまれる。 (※今日の日報の1面には菊池雄星選手・大谷翔平選手も載っていました。)
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