2019年12月11日水曜日

自分の色を

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ボクモバ 2019.12.10

[特集]インタビュー 世界3階級制覇王者 八重樫東(大橋)

12/23(月) 横浜アリーナ
IBF世界フライ級タイトルマッチ
モルティ・ムザラネVS八重樫東
八重樫東「まだ八重樫は終わっていない」
 "激闘王"が2年半ぶりの世界戦で再び奇跡を超す! 世界3階級制覇王者の八重樫東(36=大橋)は、12月23日に横浜アリーナでIBF(国際ボクシング連盟)フライ級王者のモルティ・ムザラネ(37=南アフリカ)に挑む。スーパーフライ級での4階級制覇を目指していた八重樫だったが、交渉が難航しフライ級での王座奪還に方向転換した。
 ムザラネは、昨年7月の王座決定戦で、6年ぶりに王座返り咲きを果たすと大晦日にマカオで坂本真宏(六島)、今年5月に黒田雅之(川崎新田)を破り2度の防衛に成功している。長いリーチを活かしガードを固め、攻防の駆け引きに長けたベテランチャンピオンだ。八重樫は、安定王者からベルトをもぎ取りにいくため、これまで以上にハードなメニューで自らの体をいじめ抜いていた。

■2年半ぶりに王座奪還のチャンスが巡ってきました。ここまで待ち、長く感じたのではないでしょうか?
八重樫 「やっときたか」という気持ちはないですね。チャンスはそう簡単に転がっていないのは知っているし、そういうタイミングだったんじゃないですか。幸いケガをしていない状態だし、方向性という意味では、「こっちに行けばいいんだ」という、ある種の行き場所が見つかったというか(笑)。
■本日、練習を見させてもらいましたが、反復横跳びのメニューを見たのは初めてです。
八重樫 見たことなかったですか?意図があって最近、取り入れたので見たことがないのは当然ですよ(笑)。
■ムザラネ選手と対戦が決まった時の心境を聞かせてください。
八重樫 嫌な相手だなと思いました。ジャンケンで例えるなら彼がグーだとしたら、僕はチョキなんじゃないかな。パーのタイプの選手なら得意だけど、ああいうタイプは得意ではないです。
■なるほど…。
八重樫 尚弥(井上尚弥)みたいなグーチョキパーみたいな奴もいますが、あれは特別で力が拮抗している場合は相性が重要です。そういう意味ではさほど相性は良くない。ただ、蓋を開けてみないとわからなくて、もしかしたらめちゃくちゃ噛み合うかもしれない。それは風を感じてやるしかないです。
■これまでのキャリアで相性が悪いなと感じた選手はいますか?
八重樫 当時はサウスポーが嫌いでしたので、五十嵐は思い切り悪かったですね。ジャンケンだとしたら、あいつがパーで僕がグーだったのですが、僕がチョキにして相性を良くしたんです。現時点ではムザラネとは相性が悪いです。というか、どの選手もムザラネとは(相性が)悪いと思いますよ。でも、だからこそやりがいがありますよね。
※2013年4月に五十嵐俊幸(帝拳→引退)が保持していたWBC世界フライ級王座に挑戦し3-0の判定勝ちで王座を獲得。
■相性が悪いということは、八重樫選手自身は不利だと思っているのでしょうか?
八重樫 そうは思っていないですよ。変な話ですが、ドンピシャにハマる感じかもしれない感はあります。どういう風に打ち合いに持っていくのかが一番大事なことで、無理矢理、強引に(打ち合いに)引き込まれるのか、それとも自分が主導権を握って引き込んでいくのかという。そこは全然違うと思います。僕がペースを握ってグッと引っ張っていければ、僕が優位な打ち合いに持っていける。
■そうですね。
八重樫 距離感もタイミングもそうです。やってみないと分からないですが、相手が自分の思うように動いてくれたらハマるんじゃないかな。
■我慢比べの展開になると、ムザラネ選手が得意とするところだと思います。
八重樫 そういうのじゃないんです。相手の土俵で相撲を取っても、こっちがしんどいだけなんで。それこそ、こっちの土俵に引きずり込んでから勝負します。

■今年5月に行われたムザラネ選手と黒田選手の試合でテレビ中継の解説をしていましたね。
八重樫 その時は戦うなんてまったく思っていませんでした。改めてもう一度見返しました。崩しにくい、老獪なボクシングですよね。良い歳の取り方をしているじゃないですか。
■良い歳の取り方とは?
八重樫 ポイントの取り方を知っていて、戦い方を分かっていますよね。
■ムザラネ選手は10年前にはドネアと対戦していますが、その時とどのように変わっていると思いますか?
八重樫 ボクシング自体はあまり変わっていないですよね。ただ、ムラがなくなったというか、手堅いボクシングになりましたね。
※2008年11月に当時IBF世界フライ級王者のノニト・ドネア(米/比)に挑戦し6回TKO負け
■黒田選手は試合後に「ジャブが予想以上に伸びてきた」と話していました。それは当日やってみないとわからないですか?
八重樫 いや、それは想像できていますよ。それはコミコミですよ。だって、そんな見ればわかるじゃないですか、拳が硬そうじゃないですか。
■これまでに何度か「死に場所を探している」というような発言をしていて、これが最後になるということを言いますが。
八重樫 毎回言いますね、死にぞこないですから(笑)。でも、覚悟ってそんなもんで、明日がある勝負をしてもしょうがないですよ。
■これが最後ではないですよね?
八重樫 うん。もちろんネクストステージ行きたいです。変な話、いつまでもボクシングは続けられないですけど、いつまでも続けていきたいって願望もあります。そんなのはわかっているんで。だから、辞めようとも思わないし、「この試合で負けたら辞めます」とも言わない。やっぱり24日になってみないと分からない。
■年末のリングは、3年ぶりとなります。
八重樫 3年ぶり?懐かしいですね。ここ数年は年末のプライベートはめちゃめちゃ充実していましたからね(笑)。試合が終わったらサンタクロースにならないといけないんで、試合がクリスマス前で良かったですよ。
■一番下のお子さんはいくつでした?
八重樫 6歳です。上のコが吹き込んでいるからサンタを信じていないでしょうが、YouTubeで子どものおもちゃを紹介する動画を見て「このおもちゃが欲しい」と言ってきました。僕が買うのを分かっているんですが、「サンタさんにお手紙を書かないといけないね。お父ちゃんがサンタさんに言っておくね」と。

■そういえば試合の次の日がクリスマスイブですね。
八重樫 どんな顔のサンタさんになるのかわからないですけどね。勝って一夜明け会見してそのままクリスマスを迎えたいですね。
■勝てば、長谷川穂積氏の35歳9ヵ月を抜く36歳10カ月となる日本人男子最年長での世界王座奪取となります。
八重樫 関係ないです。海外では僕くらいの年で活躍している選手はたくさんいますから。ドネアだってまだ続けるじゃないですか。同い年ですよ。
■11月の井上選手との試合を見てドネア選手の方に何を感じましたか?
八重樫 闘志。みんなそうですが、あそこまでやるとは思わなかったんじゃないですか。気迫がありましたね。だてに5階級制覇はしていないなと。5階級も獲っている人間ってたまたまじゃないんですよ。絶対に何かを持っているんです。
■同い年のドネア選手の活躍に負けていられないですね。
八重樫 そうですね。ムザラネも同い年で「年齢は関係ない」って言っても意味がないですけど、"まだ八重樫は終わっていない"というところを見せたい。いろんな意味で最後の試合のように思われたり言われたりしていますが、僕自身はそうは思っていない。
■八重樫選手は、これまでも何度もこれまでかというところから這い上がって王座を奪還してきました。
八重樫 らしくいたいなと思いますよ。「やっぱり八重樫の試合だな」と思ってもらいたい。村田も拳四朗もいいですし、井上尚弥も良い。たくさん個性的なボクサーがいる中で「俺は八重樫のボクシングが好きだな」という風になったらいいな、とずっと思っています。
■八重樫選手のボクシングとは?
八重樫 尚弥と同じジムでチャンピオン同士の時代があり、どうしても比べられたりもしましたが、「尚弥は尚弥、俺は俺」と思ってやってきました。同じ勝ちでも僕は腫れた顔で尚弥はきれいな顔をしていても勝ちは勝ちじゃないですか。自分は自分のボクシングの色があって、自分の色を出せれば見ている人も面白いんじゃないかな。そういうボクサーでいたい。
■では今回も期待してもいいですね。
八重樫 半分くらい(笑)。不安半分、期待半分の方が面白いでしょ。「あ~、負けたら八重樫辞めるのかな。でも八重樫だったらやってくれるんじゃないかな」と。それがハラハラドキドキってなるじゃないですか。それが八重樫劇場ですよ。
■どうもありがとうございました。

「ボクモバの目」
 何度もこれまでかという場面から立ち上がり、ボクシングファンに感動を与えてきた八重樫。スピードでかき回し、序盤から主導権を掴みたい。打ち合いの場面でどれだけの精神的アドバンテージを握っているか。強いチャンピオンだが、「八重樫なら何とかしてくれるだろう」と期待せずにはいられない。年末の世界戦で勝利の味を噛み締めてほしいと願う。

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