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buzzmovieのブログ 2018年12月19日
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“ダークヒーロー”力石徹から学ぶ、不祥事続きのボクシング界の「あした」
2018年。良くも悪くも話題が多かった競技といえば、ボクシングではないだろうか。
井上尚弥の日本人世界戦最速の70秒KO勝利といったうれしいニュースも確かにあった。が、そんな偉業よりもメディアが時間と紙面を割いたのは、「奈良判定」や助成金流用などで物議を醸した山根明・日本ボクシング連盟前会長の問題だった。また、不祥事は海外のボクシング界でも散見し、東京五輪でのボクシング競技除外についても議論が行われている。
日本人初の4階級制覇を目指す35歳の八重樫東は、8月の試合での勝利後、所属する大橋ジムの大橋秀行会長とリング上で抱き合って喜んだのも束の間、こんな言葉を残してファンの支持を集めていた。
「ボクシングも今なんかいろいろゴタゴタゴタゴタありますけど、一生懸命ボクサーをやっています。ボクサーを1人1人心から応援していただければ、もっとボクシング界は盛り上がると思う」
八重樫のコメントは立派だが、逆にいえば現役選手がコメントしなければならないほどボクシング界は危機感を抱いている、ということでもあるだろう。
そんな八重樫と大橋会長、冒頭でも触れた井上らが、12月15日放送のNHK特番で、あるボクサーの生きざまについて語っていた。
その男の名は、力石徹。高森朝雄(梶原一騎)原作、ちばてつや作画のボクシング漫画『あしたのジョー』に登場する矢吹丈の“永遠のライバル”、力石徹にスポットを当てたNHK BSプレミアム『ダークヒーローの美学 力石徹』での1コマだ。
今年は『あしたのジョー』連載開始から50周年という大きな節目。そのため、『あしたのジョー展』の開催や、本作を原案としたアニメ『メガロボクス』の放送など、さまざまな形で再検証がされた。それもまた、ボクシング界にとって明るい話題のひとつだったはず。そのオーラスともいえる企画が、今回の『ダークヒーローの美学 力石徹』だった。
今なお、多くのファンに愛され続ける稀代のダークヒーロー・力石の魅力と、彼の人生に隠された美学を解き明かしていく、というこの番組。力石が原作漫画に登場した全1,228コマだけを切り抜き、セリフの「……」の数まで徹底分析していく姿は、減量苦で狂気の叫びを上げた力石よろしく、NHKスタッフもさぞ叫びたかったであろう、狂気の検証だった。
また、「力石の顔面分析」なる企画では、「アゴの発達は王者の印。白目がちの鋭い目はテロリスト顔。でも、成功すれば革命者」と評したかと思えば、「“怖い目つき×常にほほえみを絶やさない口元”は今でいう『ギャップ萌え』」であるとし、「力石徹は元祖ギャップ萌え男子だった」と結論付けるなど、興味深い考察が続いた。
そんな中、八重樫や大橋会長、井上らが口にしたのが、力石徹と聞いて外すことができない「減量」についてだ。今年は世界タイトルマッチで減量失敗のニュースが続いただけに、あらためて今、掘り下げるべきテーマともいえる。
井上は、「今のボクシング界ではありえない」としつつ、「そこまでして闘いたいというわけですよね、ジョーと。気持ちはわかる」と語り、八重樫は「トイレの水さえ飲みたくなる渇き」と減量中の飢餓感について解説する。
そして、この2人よりもさらに味わい深いコメントをしていたのが大橋会長だ。
「死ぬのは怖くない。負けるのは怖い」
という大橋節は、けだし名言。
「闘い合った人間は、わかり合える。2人だけなんです、気持ちがわかるのは」
と語り、四角いリングで闘った2人に芽生える特別な絆について、自身の現役時代の敗戦を振り返りながら熱く語っていた。
日本ボクシング史が誇る彼ら偉大なチャンプたちが思わず語りたくなる男、というだけで、あらためて力石の株が上がった瞬間でもあった。
そしてもうひとり、口角泡を飛ばして力石を語ったのが、『あしたのジョーの方程式』(太田出版)なる本まで出している漫画家の島本和彦だ。
島本によれば、力石こそが矢吹丈にとっての「あした=人生の指針」であり、常に矢吹の「あした」の存在となるべく、常に一歩先を歩んでいたという。
そんなボクシング界の「あした」のような存在になれる人物の台頭は、2019年にはあるのだろうか? プレー以外の部分でスッキリしないことが多いボクシング界には、“生みの親”ちばてつや先生が番組で発していた次のコメントを届けたい。
「人間の生きざまは、長く生きることじゃない。どう生きるか」
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