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デイリー 2015年10月17日
王座の格問われる世界戦
世界王座を守って、ここまで苦言を呈される時代になったかと思った。9月27日、ボクシングのWBA世界フライ級王者・井岡一翔(26)=井岡=が大差判定で初防衛に成功。
視聴率は関東地区平均10・8パーセント、関西地区同12・6パーセント(ビデオリサーチ調べ)。最低限の2桁確保にも、生中継したTBS関係者は「思っていたより2~3パーセント低い」と、険しい表情で語った。
9月22日のWBCバンタム級王者・山中慎介-モレノ戦は12・5パーセント(関東地区)を記録。「どんな相手とやるか、どんな試合をやるか」とボクシングファンの声を代弁。井岡陣営には大みそか、既定路線となっているレベコとの再戦を再考し、統一戦に動くよう要望までした。
試合を振り返れば一翔の完勝だった。何度も空振りさせる防御能力の高さに、的確なボディー打ち。下から上へのコンビネーションはお手本。3階級制覇を果たし、1ランク上の姿を披露した。世界同10位の格下、ロベルト・ドミンゴ・ソーサ(アルゼンチン)を倒し切れなかったが、軽量級の世界戦でKOは簡単なものではない。
あるジムの会長が警鐘を鳴らす。「確かに盛り上がりには欠けたけど10パーセント取って文句を言われるのは厳しいな。常に強い相手とやってたらボクサーが壊れてしまうで。次から次へスターが求められる時代になったことは注目されて、いいこともあるけど“使い捨て”みたいにもなるよ」。
育てる側とすれば、世界王者の防衛を重ねながら、自信を付け、技術を上げてビッグマッチへ期を熟したい。ただ、見る側は安易な防衛戦を昔以上に望まなくなってきている。視聴率のために試合をやるわけではないが、数字は無視できない。
WBO世界ミニマム級王者・田中恒成(20)=畑中=は、初防衛戦でIBF世界同級王者・高山勝成(32)=仲里=との統一戦に向け動いている。若きスター候補が、プロ6戦目で戦うにしては、“大物”過ぎる相手にも「ファンが見たい試合を」と熱望する。
日本ボクシング界がWBA、WBCに加え、IBFとWBOの両団体に加盟し、4団体認定となって2年半。王者が乱立し、王座の“格”が問われる一方、超一流を日本で目にする機会が増えたのはメリットだろう。
八重樫東をボコボコにしたWBC世界フライ級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)、大場浩平を圧倒したIBF世界バンタム級王者ランディ・カバジェロ(米国)、天笠尚の顔面を崩壊させたWBA、WBO世界統一スーパーバンタム級王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)…。日本で「最強」を名乗るには、“世界のホンモノ”を倒さねばならなくなった。
日本ジム所属の現役世界王者は現在、10人と飛躍的に増えた。ただ4団体認定以降、「新スター王者」は何人誕生しただろうか。むしろ、負けた八重樫や天笠の方が“男”を上げた。年末恒例の世界戦ラッシュへ向け、各陣営のマッチメークも今が佳境。「誰が誰に挑むのか」-。ファンの目は肥えている。
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