2018年5月20日日曜日

大橋ジムの英断

https://goo.gl/Jqw58h
猫とボクシングと私。 2018.05.20

次元の違うステージへ!マクドネル×井上
5・25東京・大田区総合体育館「FUJI BOXING」
 ▼WBA世界バンタム級タイトルマッチ 12回戦
  王者・ジェイミー・マクドネル(英国) × 同級2位・井上尚弥(大橋)
 ▼WBC世界Lフライ級タイトルマッチ 12回戦
  王者・拳四朗(BMB) × 同級1位・ガニガン・ロペス(メキシコ)
 ▼10回戦
  WBC世界バンタム級9位・井上拓真(大橋) × ワルド・サブ(インドネシア)
 ▼8回戦
  日本フェザー級14位・溜田剛士(大橋) × リボ・レンクン(インドネシア)
 ▼6回戦
   桑原拓(大橋) × モハマッド・ソリミン(インドネシア)

さすがは注目の一戦、日頃は欧米の試合を中心に扱う大半の賭け屋がオッズを出しており、おおよそ1-5、1-6といった程度で井上が優勢だ。モンスターの強さは海外にも十分、伝わっている。この試合の価値がさらに上がったのは、WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)のバンタム級トーナメント開催が決まったからで、勝者の出場が見込まれている。そこには、WBAスーパー王者バーネット、WBO王者テテも参加が内定。正真正銘、バンタム級の世界最強を決める舞台ができつつある。日本の世界チャンピオンの多くは、「防衛回数」という海外ではあまり重要視されていない記録をテーマにしていて、それは細々と延命して地上波のテレビ放映権料を稼ぐビジネスモデルのためで、山中慎介や内山高志がいくら防衛を続けても他団体王者との統一戦はまったく浮上しないのもそれが理由だった。正直、日本のボクシング興行の限界が見えた話だ。

 しかし、井上に用意されたステージは違う。海の向こうでスケールのケタ違いなビッグビジネスが立ち上がり、競走馬の前に見たこともないようなデカいニンジンがぶら下げられている。凄いのは、井上は今回がバンタム級の初戦だということ。ライトフライ、スーパーフライで圧倒的な強さを見せつけてきた井上だけに、バンタム級でも十分通用しそうのは分かるが、それでも試運転ナシでこんな試合を組んでいくのだから、今までの日本人・世界王者とはまったく違う次元にいると言える。日本ではスケールの小さい世界戦興行を続けてきたせいもあって、ボクシングはマイナースポーツ化しているから、この凄い話も世間の注目は低い感じだが、ハッキリ言えば、これでフジテレビの視聴率がいくつとるかは、まったく重要ではなくなっている。見る目が養われていない日本市場より、もっと高く買うヨーロッパのプロモーターと取引して、その強さに見合う対価を受け取ればいい。僕が自動車メーカーの系列商社に勤めていた頃に知り合った60代エンジニアは、定年退職後にドイツ企業に誘われ、日本語以外はまったくできないのに、奥さんを連れてフランクフルト南の街に移住。そこでの報酬は日本時代よりずっと高く、「もっと早く行くべきだった」と言っていた。日本は国内で一定の需要を生み出すことができたからビジネスが内向き傾向だが、個人がより高い市場を求めて外に出ることは可能だ。実は僕もフリージャーナリストとして長年、一定の収入をキープしてはきたが、もっと「攻め」ようと、自分のオフィスを海外に移転させた。正直、これはもう10年、早くやるべきだったと思っている。そんな身だから、なお井上のケースは注目したいところ。強いボクサーがもっと高い対価を受け取る方法論が示されれば、いまのボクシングに夢を感じきれない若者たちの目の色を変えることもできる。その出発点が日本の興行だったのは、日本人としては嬉しい。条件交渉を長引かせずマクドネルを呼んだ大橋ジムの英断である。

 マクドネルは、15年9月に亀田和毅と再戦したとき、「前回よりイージーな試合になる」と言って、前回の1点差から最大7点差まで広げる有言実行の連勝を決めた。ジャブからストレートで突き放す、その距離の取り方をよりスムーズにして3回から早くも、和毅の変わらないカウンター狙いのリズムを崩していた。8回、劣勢に焦った和毅が足を止めて打ち合おうとしても、想定内というように逆にダウンを奪った。突出した強さを発揮したような試合ではなかったから地味な勝利だが、この返り討ちは自分のやれるテクニックを正確に把握しているようだった。打たせずに打つ欧州型アウトボクサーだが、逃げるのではなく攻めるタイプ。そこでカギとなるヒット・アンド・アウェーだが、対する井上は絶妙な距離感から、強い踏み込みで序盤から相手を委縮させる先手必勝スタイル。それはジャブでもストレート級の破壊力があることが大きく、これに相手が少しでも弱気になるや、その逃げ道を塞ぐようなフットワークで追い詰める。マクドネルがこれに早々に下がらせられたり、井上のボディを食らうようだと、その長いリーチを生かせないまま倒されてもおかしくないだろう。井上は序盤で多少強引にでも勝利パターンを作っていくことが予想されるが、階級を上げたことによるパワーや体格差の影響がどれぐらいか、そこも今後のステージを占う上で見どころになる。


 12月に久高寛之、益田健太郎を連破した拓真は、今回12勝(2KO)11敗のサブと対戦。この選手は16年、和氣慎吾に5回KO負け。左右フックを振りまわすばかりだった。拓真のワンサイドとなりそうだ。3連勝中の溜田は来日1敗のインドネシア人(36勝(14KO)24敗6分)と対戦。レンクンは前回8月にマイク・タワッチャイにKO負けしている。B級デビューの桑原は、4月のプロテストで八重樫東とスパー。興国高・東農大出身でアマ50勝18敗。相手のソリミンは3勝(3KO)6敗、来日2敗でうちひとつは4回戦だった。

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