2014年9月4日木曜日

八重樫は歴史を変えることができるのか

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THE PAGE 2014.09.04 16:51
八重樫は最強挑戦者に勝てるのか?

「村田諒太第5戦&井上尚弥、八重樫東のダブル世界戦」(9月5日、代々木第二体育館)の前日計量が4日、都内のホテルで行われ、軽量級世界最強ボクサーのローマン・ゴンザレス(27歳、ニカラグア)を挑戦者に迎えるWBC世界フライ級王者、八重樫東(31歳、大橋ジム)他、出場6選手は、全員一回でパスをした。
 最初に秤に乗ったのは、八重樫だった。続いてプロ、アマ通じて126戦無敗の2階級王者“ロマゴン”。最強挑戦者はリミットより0.01キロアンダーでクリアした。
八重樫のフィジカルトレーニングを担当してきたトレーナーの土居進氏は、その怪物挑戦者の肉体を見て、一瞬、顔をしかめた。
「元々、持っているフィジカルの強さなんでしょうね。体が分厚いというか太い。ここ2試合と比べて明らかに体を作ってきています。過去、八重樫さんが戦ってきた選手の中で文字通り最強です。井岡より? 比べ物にもなりません。ただトレーニングで鍛えられた筋肉ではありません。そこは八重樫さんが上回っています。あのボディならば、八重樫さんのパンチが届けば効かすこともできると思います。今回は下半身を中心にトレーニングをしましたし、さらにレベルアップをしています。私は十分、可能性はあると思っています」
計量を終えた八重樫は、ホテルの廊下に移動すると、持参した数種類もの錠剤や粉末のサプリメントを体に流し込んだ。報道陣に取り囲まれたが、その輪の後ろにいては聞き取れないほど声は小さい。
「ここまで来てジタバタしてもしょうがない。数字的にも僕が圧倒的に不利なことは、もう聞き飽きた」
 大好きなNBAの元スーパースター、マイケル・ジョーダンのTシャツ姿。それを見てロマゴンのマネージャーからプレゼントされたというマイケル・ジョーダンの黒いリストバントを付けたり外したりしていた。

過去に最強と呼ばれたボクサーと戦った日本人は少なくない。
1973年にガッツ石松氏は、敵地で“石の拳”と呼ばれたロベルト・デュランの持つ世界ライト級王座に挑戦したが、10回KO負け。ロイヤル小林氏も、1975年にロマゴンと同じニカラグア出身の“貴公子”アレクシス・アルゲリョのWBA世界フェザー級王座に日本で挑戦したが5回KO負け。八重樫の所属する大橋ジムの大橋秀行会長も、後に22度タイトルを防衛、無敗のまま引退したリカルド・ロペスにWBC世界ストロー級(現ミニマム)のタイトルを奪われたし、WBA世界Sフライ級王者、セレス小林氏も、当時無敗の挑戦者だったアレクサンデル・ムニョスを相手に玉砕した。最近ではスーパーバンタムのWBC名誉王者だった西岡利晃が、ラスベガスで4階級を制覇しているWBO、IBFの統一王者、ノニト・ドネアと世紀の一戦を戦ったが、これも9回TKO負け。
最強ボクサーとの対戦での番狂わせは少ないが、1991年に井岡弘樹が、17度防衛の記録を更新中だったWBA世界ライトフライ級王者、柳明佑に圧倒的不利な下馬評を覆して判定で勝った試合がある。1990年には東京ドームで、当時、37戦無敗だったマイク・タイソンが、ジェームス・バスター・ダグラスに10回にリング上で舌を出して敗れた。ボクシングという競技には、歴史を変える番狂わせが起こりやすい土壌はある。

では、八重樫に勝機はあるのか?
 八重樫は、先月、数日間、大橋ジムでトレーニングをしたWBA、WBC、IBFの3団体でミニマム級のタイトルを獲得している高山勝成(仲里)からヒントをもらった。高山は2009年7月にロマゴンの2度目の防衛戦の相手として挑戦、0-3の判定で敗れたが、12ラウンドは戦い抜いた。
「ロマゴンの45度範囲内の角度で奴の距離に立たないこと。プレッシャーが凄くて知らない間に飲み込まれてしまう。ただスピードと俊敏性はないから、サイド、サイドに動いて、そこから突破口を開いていくしかないのではないのでしょうか」
 ロマゴンの凄さを肌で知る高山は、そう感想を伝えたという。
「ミニマム時代のロマゴンとは違いますが、参考にはなりました。とにかく足を使って12ラウンドは逃げ切れない。打ち合ってやろうとも思っています。試合途中でスタイルを変えることは、かなりのエネルギーが必要なんですが、もう出たとこ勝負ですよ」
八重樫はもう腹をくくっている。

 作戦参謀の松本好二トレーナーも、いくつかのロマゴン対策を用意している。
「ロマゴンは、至近距離からアッパーやボディを絡めて立体的な3Dボクシングを仕掛けてくる。そこに対して、こちらは平面的な2Dボクシングで対処したい。ロマゴンは、足はないが、誘われて下手に追うと、外されてカウンターを狙われる。スピードは活かしたいが、下がっては相手の思うツボ。至近距離で戦わねばならない場合は出てくるが、あらゆる手段を使って、こちらのペースに引き込みたい。勇気が必要だが、相打ちから次のパンチをこちらが先に打って下がらせるのも一手。熱く冷静に。そういう戦いを八重樫がリング上でやってくれるかどうか。奴の勇気と感性に賭けるしかない」
 八重樫は、昨年12月の指名試合で、エドガル・ソーサをスピードとステップワークで封印したが、そのボクシングをさらにグレードアップさせ、加えてロマゴンが「1、2の3」でパンチを合わせにいく“相打ち”を嫌がる傾向にあることを逆手に取りたいと考えている。
 
 ほとんどのボクシング関係者が「八重樫に勝ち目は薄い」と囁く中、ボクシング理論に定評のある元WBA世界Sフライ級王者、飯田覚士氏に展望を聞いてみた。
「8対2、7対3で八重樫選手が不利だと予想されているようですが、私は両者にそこまでの差はないと考えています。5・5対4・5くらいの実力差ではないでしょうか。ロマゴンもミニマム時代とは違って一発で簡単に倒してしまうまでのパンチ力ではありません。詰め方もミドル級のゴロフキンなどと比べると甘いんです。八重樫選手はパワーで劣っていないし足が使える点では上です。上手く足を使い、スピードとコンビネーション、連打を活かせればチャンスはあります。近い距離になればガードの上からでもいいのでどれだけ強いパンチを打てるか。ロマゴンは、打たれるのが嫌な選手ですから危険を承知で勇気を出して、相打ちを仕掛ければ、ひるむでしょうし、八重樫選手がペースを奪っていく、きっかけにもなるのではないでしょうか。ただロマゴンの当て勘の凄さと破壊力は、語るまではありません。いずれにしろ試合は8ラウンド以降に決着が着くのではと予想しています」
 八重樫は歴史を変えることができるのか。運命のゴングは9月5日の夜。

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