日刊スポーツ 2014年9月2日8時49分
「八重樫よ耐えて後半勝負だ」元王者分析
今月5日に、WBC世界フライ級王者・八重樫東(31=大橋)が、39戦無敗の最強挑戦者ローマン・ゴンサレス(27=帝拳、ニカラグア)と4度目の防衛戦を行う。2階級制覇王者同士の注目の一戦を前に、ゴンサレスと対戦経験のある、元WBA世界ミニマム級王者新井田豊氏(35)、前IBF同級王者高山勝成(31=仲里)、八重樫をよく知る元WBC世界スーパーフライ級王者川嶋勝重氏(39)に試合展開を予想、分析してもらった。3者ともに八重樫勝利のポイントに「後半勝負」を挙げた。39勝(33KO)の驚異的なKO率が示す通り、ゴンサレス最大の武器は卓越したオフェンス技術だ。対戦した2人は、パンチの質が他の選手とは異なると声をそろえた。
新井田 僕は1回の右ストレートで鼓膜を破られた。ロマゴンはすべてのパンチをナックルパートで打つ技術がある。拳を面でとらえてくるので、体との間に隙間がなく、ゴツンゴツンと打たれる感覚だった。
高山 腰をフルに生かしたパンチで1発1発が重たい。それに加えて、上下に攻撃を散らしてくるので、コンビネーションが見えづらい。普通はアッパーが来ると思ったらアゴを引き、歯を食いしばってパンチを殺すが、見えないからそれができなかった。
穴のないゴンサレスの攻撃で、唯一「一角落ちる」とされるのがスピードだ。だが、圧力をかけてきた時の連打は、それを問題にしないほどの技術と力があると新井田氏は言う。
新井田 一般的にラッシュには必ず「波」があるが、ロマゴンのはそれが長い。打ち方が理にかなっているから、パンチを続けても疲れない。そして、終わったかなと思ったら、内角に突き上げるような得意のアッパーが飛んでくる。テンポというよりも強打をバランス良く打ち続け、相手に反撃を許さない。戦前の予想では「八重樫不利」の声が多い。では、どのような試合展開なら勝機を見いだせるのか。3者ともに共通したのが「後半勝負」という点だ。
川嶋 八重樫は激しい打ち合いのイメージが強いが、本来はアウトボクシングが得意な選手。お互い元気な序盤は、特に足を使って優位に進めたい。(WBCルールの)4回と8回終了時に公開採点があるのも重要な要素。4回は最低でもドローで終えないと苦しい。仮に中盤で盛り返されても、スタミナでは八重樫が上なので、後半になれば戦い方を変えられる。
高山 判定勝ち狙いでいいと思う。どれだけ下がりながらポイントを取るボクシングを続けられるか。ただ、中盤まで思うようにポイントが取れず、判定でも苦しい展開になれば、開き直ってケンカ(打ち合い)ができるのも八重樫さん。プレッシャーに負けて付き合わされるのは嫌だが、相手のスタミナ、集中力が切れてきた後半なら逆にKO決着もあるかもしれない。
「後半勝負」に持ち込むために、必要不可欠なのが中盤までの我慢だ。心身の削り合いをいかに耐えるか。八重樫にとっては、そこが勝敗の分かれ目になる。
新井田 ロマゴンも、あそこまで気持ちが折れない選手とは戦ったことがないと思う。劣勢になってもそこからひっくり返せる。きつい攻めを覚悟して、見ているこっちまで疲れるようなタフな試合になれば、八重樫選手の流れ。前半で下がらずに我慢すれば、後半に倒すチャンスも来る。
川嶋 初めての世界戦であごを2カ所折られても最後まで戦った男。気持ちでは負けない。それに、ロマゴンもフライ級での世界戦は初めて。戦ってみて八重樫が「思ったよりパンチがないな」と感じる可能性もある。ミニマム級で戦ったら勝てなくても、フライ級なら体の力の差が出るかもしれない。そういう展開になれば勝機は広がる。
強すぎて相手がいないとまでいわれたゴンサレスを、八重樫は防衛戦の相手に指名した。「おとこ気」でファンの喝采を浴びたが、ゴールはもちろんそこではない。2階級制覇王者同士の真っ向勝負に、引退した先輩世界王者からも力強いエールが送られた。
新井田 勝敗は分からないが、「これがボクシングだ」という試合を見せてくれると思う。決して無謀な挑戦なんかではない。自分も1人のファンとして楽しみにしている。
川嶋 みんなの記憶に残るような熱い試合をして欲しい。八重樫はランニングトレーニングで抜かれるのさえ嫌がるほどの負けず嫌い。やってくれると思う。最後は僕の好きな言葉「気合、根性」。同じレベル同士の戦いになったら、勝ちたいという思いが強い方が勝つ。それは4回戦でも、世界戦であっても同じだ。
ゴンサレスの3階級制覇達成か、八重樫が意地を見せるのか-。決戦まで、あと3日。両者は、今日2日に都内で行われる予備検診で対面する。
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