2016年2月23日火曜日

「本当に中3? 末恐ろしい」

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夕刊アメーバ―ニュース 2016年02月23日 11時00分
世界最速2階級王者・井上尚弥のトレーナーでもある父が明かす育成法「ローマン・ゴンサレスとは是非やりたい。実現するのは…」
ボクシング界に現れた超新星、井上尚弥(なおや)。弱冠22歳、プロキャリアわずか9戦で、現在すでに世界タイトル2階級を制した“怪物”を育てたのは、実父でもある専属トレーナーの井上真吾氏だ。
幼少期から今日まで続く親子鷹の日々には、どのようなモットーとメソッドが隠されているのか?
* * *
―昨年末、尚弥選手は見事な2ラウンドKOで初防衛を果たしました。右拳のケガで1年間のブランクがありましたが、不安はありませんでしたか?

井上 アマチュア時代から含めて、これほど長いブランクをつくったのは初めてでしたから、やはり多少の不安はありました。いつも通りのボクシングをすれば問題ないとわかっていても、もしブランクの影響で歯車が狂ってしまったら、という不安ですね。ただ、本人(尚弥)が1ラウンドから丁寧に戦ってくれたので、結果的には割と安心して見ていられましたけど。

―日々のトレーニング法や子育て論を一冊にまとめられました。トレーナーとしての育成理論は独学のものですか?

井上 そうですね。かつてジム通いをしていた頃にトレーナーから教わったことがベースにありますが、昔から積極的にいろんなトレーニング法を試していたことが役に立っています。「この練習はどんな効果があるんだろう?」とか、「この練習はどのくらいキツイのかな?」と、気になったものは片っ端からやってみて、効きそうなものを試行錯誤で磨いていきました。6歳でボクシングを始めた尚弥も、小学生になると一緒にジムに来るようになったので、自分がやっていた練習を自然とやるようになりました。

―朝食の摂取を強制しないなど、セオリーやスポーツ科学をやみくもに取り入れない姿勢が新鮮でした。

井上 結局、なんでもかんでも押しつけてしまうと、ストレスになりますからね。ボクシングに限らず、なんでも楽しく真剣にやろうというのが井上家のモットーなんです。例えばサプリメントひとつにしても、薬のようにすぐに効果が実感できるものではないので、基本的に“試してみて良さそうだったら取り入れる”といった程度のスタンスで考えています。こういう感覚的な部分は大切にしていますね。

―わが子の非凡な資質に気づいたのはいつ頃のことですか?

井上 実はそういう視点で見ていなかったせいか、特にどのタイミングで、というのはないんです。毎日やれることを全力で頑張って、日々少しでも強くなれたらそれでいいと思っていたので、気づけばこうなっていた印象です。小学6年生の時にスパーリング大会に参加して、同世代の子たちとは大きな差があることを初めて実感しましたが、それも単に競技に対する“本気度”の違いと考えていたので、それが自信につながることもなかったですね。

―今回の手記には、同門の八重樫東(あきら)選手(現IBF世界ライトフライ級王者)とのスパーリングの顛末(てんまつ)など、マニアにも興味深いエピソードが満載です。

井上 中学生の時に初めて八重樫選手と手合わせした際には、「本当に中3? 末恐ろしい」と言ってもらいましたが、内容的には全く手も足も出ず、いい勉強になりました。そういう経験が糧(かて)となり、高校3年生になる頃には「もう褒(ほ)める余裕はない。シャレにならない強さだ」と言ってもらえるようになりました。練習でも試合でも、負けや接戦から得るものは大きいと思います。

―その意味では、これほどずぬけた存在になると、実力に見合った練習相手を見つけるのもひと苦労では…?

井上 そうですね。そのあたりは海外の強い選手を探すなど、海外修業に出向くことも考えています。国内にもまだまだ強い選手は大勢いますが、同じ相手とばかりやっていると、どうしても慣れてしまって緊張感が失われますから。まだ知られていない強豪たちと積極的に手合わせしていきたいですね。少なくとも、暖かい温室で育てたいとは考えていないので、スパーリングとはいえ敵地のピリピリした環境でどんどんやらせたいと思っています。

―一方、2歳下の弟、拓真選手も昨年、東洋太平洋王座に就きました。こちらも順調なキャリアといえるのでは?

井上 トレーニング面でいえば、子供の時は特に「2歳も違うから尚弥と同じ練習はさせられない」という意識がストッパーになり、気を使いすぎた気はしています。それが精神的な甘さにつながったように感じた時期もありましたが、練習を見る限り、現在はだいぶ修正できたと思います。

―その拓真選手も、今年は世界挑戦が期待されています。

井上 そうですね。できれば年内に(世界へ)行きたいですし、それだけの実力はすでに備わっていると思っています。ただ、単に世界を獲るだけでは意味がありません。拓真らしい勝利でベルトを獲ってほしい。そのためにも次の試合あたりで、周囲を納得させるような内容を拓真には見せてほしいですね。

―そして尚弥選手の次戦は春頃、ランク2位のメキシコ選手を相手に行なわれることが一部で報じられています。

井上 マッチメイクについては会長(大橋ジム・大橋秀行氏)にすべてお任せしていますが、すでに走り込み中心のキャンプも終えて体はつくってありますから、これからスパーリングを見ながら調整していきます。

―さらに今後はアメリカ進出、そしてやはり世界的ビッグネームのローマン・ゴンサレス戦が期待されていますが…。

井上 ゴンサレスとは、是非やりたいですよね。実現するのは来年あたりかな、とイメージしていますが、自分も尚弥も状況が整えばいつでもやるつもりでいます。勝敗についてはやってみなければわかりませんが、互いの持っている戦力は最低でも五分五分と考えています。

―本場アメリカで実現すれば、日本ボクシング史に残るビッグファイトとなります。そうなると、苦手な飛行機にも頻繁(ひんぱん)に乗らなければなりませんね。

井上 確かにそれがネックですが、最近はだいぶ慣れてきました(笑)。あとは、今持っている自信を少しでも上積みできるよう、トレーニングに励むのみ。尚弥はこれまであまり接戦を経験していないのがネックで、前回の2ラウンドKOも手放しでは喜べません。本場進出までに少しでも骨のある相手と拳を合わせておきたいですね。

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